パティシエは、自分が作ったお菓子でお客様を喜ばせられる職業です。一方で、実際に働き始めてから「思っていた環境と違った」と感じる人も多く、離職率の高さには業界全体の構造が関係しているとの指摘もあります。
この記事では、パティシエの離職率や退職者が多い理由を取り上げるとともに、転職によって状況を変えるためのポイントを紹介します。
パティシエの離職率における実態
パティシエ業界は離職率が高いとされていますが、その実態について知らない方は多いでしょう。まずはパティシエの離職率と、日本の離職率データ全体から見た実態をご覧ください。
- 3年以内の離職率は6割以上とのデータも
- パティシエの離職率は他業種よりも高い傾向
3年以内の離職率は6割以上とのデータも
パティシエの離職率は高い傾向にあり、厚生労働省の調査によると、令和4年3月卒業者のうち、宿泊業・飲食サービス業に就職した人の3年以内離職率は、高卒者が64.7%、大卒者が55.4%でした。
| 新卒者 | 3年以内の離職率 |
| 高卒者・産業計 | 37.9% |
| 高卒者・宿泊業、飲食サービス業 | 64.7% |
| 大卒者・産業計 | 33.8% |
| 大卒者・宿泊業、飲食サービス業 | 55.4% |
データはあくまでも宿泊業・飲食サービス業全体で見た数値です。しかしパティシエ業界だけで見ると入社1年以内におよそ70%、3年以内には90%以上が職場を去るともいわれています。
特に新卒や未経験で入社した若手ほど、早期に離職する傾向に。「下積みの厳しさに耐えられなかった」「思っていた仕事とのギャップが大きかった」との声も多く見られます。
※参考:厚生労働省|新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)を公表します
パティシエの離職率は他業種よりも高い傾向
パティシエの離職率は労働者全体で見ても高い傾向にあり、厚生労働省の調査でも高い数値が報告されています。
| 産業区分 | 正社員 | パートタイム労働者 |
| 産業計 | 11.5% | 21.4% |
| 宿泊業・飲食サービス業(パティシエ含む) | 18.1% | 29.9% |
業界別で見ても離職率は高い傾向にあり、宿泊業・飲食サービス業におけるパートタイム労働者の離職率は29.9%で、産業計の21.4%を上回っています。
雇用形態を問わず離職率が全体の離職率を大きく超える点から見ても、パティシエは長く職場に留まるケースが少ない業界です。
パティシエの離職率が高い理由
パティシエの離職率が高い背景には、仕事内容の負担の大きさだけでなく、業界全体の構造に根差した問題も存在します。ここではパティシエが辞めたいと感じる要因として挙げられるものを紹介します。
- 長時間労働と体力的な消耗が大きい
- 給与や昇給に不満を感じる場合がある
- 縦社会が色濃く残り人間関係が厳しい
- 技術習得まで時間がかかる
- 将来性やキャリアアップの道が見えづらい
長時間労働と体力的な消耗が大きい
パティシエの仕事は勤務時間が長くなることもあり、体力的な負担も大きい仕事です。
- 開店前の仕込みや閉店後の片付けなど営業時間外の仕事も多い
- クリスマスなどのイベント日は繁忙期で休日を取りづらい
- 常に立ち仕事で体を動かすため体への負担が大きい
職場によっては、早朝の仕込みや閉店後の片付けがあり、繁忙期に勤務時間が長くなったり、休日を取りにくくなったりする場合があります。
さらにパティシエは基本的に立ち仕事で、長期にわたって働くうちに足腰への負担が蓄積され、体力的な限界から離職を決意する方もいます。
情熱だけではカバーしきれない体力的な消耗が、離職率の高さにも影響しているのです。
給与や昇給に不満を感じる場合がある
厚生労働省のjob tagでは「洋菓子製造、パティシエ」に関連する職業分類の年収を396.7万円としています。ただし、これはパティシエだけでなく、パン・菓子製造工などを含む統計上の参考値です。
昇給は店舗の売り上げや上司・オーナーの裁量により決まる職場も多く、長く働いても給与が上がりづらい構造でもあります。
昇給幅が限られていることへの不満から「頑張っても給料が上がらない」と転職を決意する方が多いのも、離職率が高い理由のひとつです。
※参考:厚生労働省|job tag – 洋菓子製造、パティシエ
縦社会が色濃く残り人間関係が厳しい
製菓・料理業界は職人の世界で、徒弟制度的な文化も根強く残っている業界のため、以下のような考え方も色濃く残っています。
- 縦社会で上下関係に厳しい
- 先輩の指示に従うのが当然である
- 「見て覚える」文化が強く質問しづらい雰囲気である
- 新人は「苦労してこそ」といった考え方が浸透している
職場によっては、上下関係を重視する文化や「見て覚える」ことを求める指導方法が残っている場合があります。小さなミスでも強く叱責されたり、上司の指示には絶対に従わなければいけなかったりする雰囲気に、精神的に消耗してしまう方も少なくありません。
「成長するため」とわかっていても人間関係のストレスが蓄積すれば、離職を考えるのも自然なことだといえます。
技術習得まで時間がかかる
パティシエの仕事は入職してすぐにスイーツ製造を任せてもらえるわけではありません。新人であればあるほど、以下のような事情から、希望する製菓作業に携わりにくい場合があります。
- 下積みとして仕込みや洗い物を中心に任されやすい
- 大手チェーンでは機械化が進んでおり製菓に携われる作業が減っている
新商品開発をはじめとした仕事は先輩が対応するケースが多く、商品の仕上げや新商品の考案を任せてもらうまで数年かかる職場も少なくありません。
希望する業務を担当できるまで時間がかかることが、仕事とのミスマッチや退職を考える要因になる場合もあります。
将来性やキャリアアップの道が見えづらい
「いつかパティシエとして活躍したい」と目標を持って働いても、キャリアアップが見えない職場では夢を叶える見通しは立ちません。役職数が限られる小規模な職場では、社内での昇進機会が少ない場合があります。
- 昇給・昇進が上司やオーナーの裁量に委ねられている
- ポジションが空かない限りは昇進が難しい
- 店舗の売り上げ状況によっては、昇進しても給与が上がりにくい
スキルを磨いたとしても、努力が報われる仕組みが整っていないと感じる方もいるでしょう。
またパティシエのなかには、スキルアップや担当領域の拡大を目的に、別の店舗やホテルへ転職する人もいます。より好条件の店舗や有名レストランのデザート部門に移るなど、ポジティブな理由で離職する方が多いのも、高い離職率の一因だといえます。
辞めたいと感じたら転職も大切な選択肢
パティシエを辞めたいと思っても「せっかく夢を持って入った業界だから」「もう少し頑張れるかも」と、なかなか一歩を踏み出せない方もいるでしょう。しかし、状況を整理すれば転職は決してネガティブな選択肢ではありません。
パティシエの仕事を続けていくか悩んだときに考えたい、転職を検討するポイントについて紹介します。
- 辞めたい理由が仕事内容か環境かで判断は変わる
- 上司や先輩に相談する
- パティシエの経験・スキルは広い業界で通用する
辞めたい理由が仕事内容か環境かで判断は変わる
転職を考えるにあたって、まず自分が「何が原因で辞めたいと思っているのか」を整理しましょう。辞めたい理由により、解消法や今後の選択肢も変わります。
| 同職種への転職が視野に入る離職理由 | 職場の労働環境や給与水準に不満がある職場の人間関係に負担を感じている |
| 別業種への転職も視野に入る離職理由 | お菓子作り自体が好きではなくなった製菓の仕事が向いていないと感じている |
職場環境に不満や不安がある方なら、同じパティシエの仕事でも職場を変えれば仕事の負担を減らせる可能性があります。一方で製菓そのものにやりがいや魅力を感じなくなったのであれば、培ったスキルを別の業界で活かすのも選択肢のひとつです。
「なぜ辞めたいのか」を丁寧に掘り下げるのが、後悔のない転職の第一歩だといえます。
上司や先輩に相談する
職場環境の負担から辞めたいと考えているのであれば、信頼できる上司や人事担当者がいる場合は、まず事情を伝える方法があります。ハラスメントや心身の不調がある場合は、社外の相談窓口や医療機関への相談も検討しましょう。
特に以下の理由で離職を考えているのであれば、まずは相談することが大切です。
- 長時間労働や休日が取れない状況が続いている
- 業務内容の偏りから自分の仕事の負担が増えている
- 職場の人間関係に悩んでいる
相談により職場内の対話や労働環境の見直しが行われれば、離職や転職をせずとも悩みが解決する可能性もあります。
ただし相談しても「改善の見通しが立たない」「そもそも相談できる環境ではない」といった場合は、転職も選択肢のひとつです。状況が変わらないまま消耗し続けるのであれば、自分の心身を守るために職場を変えることも検討しましょう。
パティシエの経験・スキルは広い業界で通用する
製菓技術に加え、衛生管理、正確な計量、段取り、繁忙時の対応経験などは、関連職種への応募でアピール材料になる可能性があります。パティシエとしてのスキルを活かせる主な働き方は、以下のとおりです。
| 主な選択肢 | 主な特徴 |
| より良い労働環境の洋菓子店 | パティシエの仕事を続けながら労働環境を変えられる選択肢。労働時間や休日制度の見直しに取り組んでいる店舗もあります。 |
| ホテル・宿泊施設のレストランやカフェ | ホテルのなかには、就業規則、研修制度、評価制度、福利厚生などが明文化されている職場もあります。ただし、運営会社や施設規模によって条件は異なります。 |
| 製菓メーカーの商品開発 | 製菓メーカーには、土日休みや完全週休2日制を採用している求人もあります。ただし、工場の稼働日や配属先によって勤務形態は異なります。 |
そのほかカフェのスイーツ担当や製菓学校の講師、フードコーディネーターなどの選択肢もあります。お菓子づくりの経験やスキルは業界を超えて役立てられるため、製菓技術を武器に自分らしく働ける方法を選んでください。
パティシエが長く活躍できる職場の特徴と選び方
パティシエとして転職先を探すときは、給料の高さや店舗の知名度だけでなく、自分が長く働き続けられるかどうかを見極めることが大切です。ここでは、パティシエが職場選びにおいて意識したいポイント4つを紹介します。
- 労務管理や福利厚生が整備されているか確認する
- 自分が仕事で何を重視したいのかを洗い出す
- ホテル・宿泊業界のパティシエも視野に入れる
- 業界特化の転職エージェントでプロに相談する
労務管理や福利厚生が整備されているか確認する
パティシエとして長く働き続けるには、働きやすい環境を選ぶことが重要です。特に以下のポイントは求人選びや面接の段階から細かく確認しましょう。
- 残業時間の実態
- 有給休暇の取得率
- 健康保険・厚生年金・雇用保険への加入状況
- 昇給制度の有無
「残業は当たり前」「休みが取りづらい」といった職場環境が根付いていると、転職しても悩みは解消できない恐れがあります。
求人票の記載だけでなく、職場見学や在籍スタッフへの質問を通じて、実際の職場環境を見極めてください。
自分が仕事で何を重視したいのかを洗い出す
職場選びにあたって「自分がパティシエとして働くにあたって何を大切にしたいのか」を整理するのも、長く働くうえで大切です。
仕事に対する考え方別に、転職先を選ぶ際のポイントを見てみましょう。
| 仕事に対する考え方 | 転職先探しのポイント |
| 技術を極めてキャリアアップしたい | スキルアップの機会が豊富で昇進制度が明確な職場を選ぶ |
| プライベートを大切にしながら働きたい | 休日の取りやすさや安定した労働時間の職場を選ぶ |
どちらが正しいということではなく、自分の価値観に合った職場を選ぶことが、長期的な仕事の満足度につながります。転職の軸が明確になれば求人探しもスムーズになり、入職後のミスマッチも防げるでしょう。
ホテル・宿泊業界のパティシエも視野に入れる
労働環境の改善を目指すのであれば、ホテルや宿泊施設のパティシエも選択肢のひとつです。ホテルのレストランやカフェで働くパティシエの仕事には、以下のような特徴があります。
- ケーキのほかコース料理のデザートなどにも挑戦できる
- 有名パティシエが在籍している場合があり職場内で師事できる
- ウェディングケーキなど大型スイーツの制作に携われる
- 経営規模が大きく福利厚生や昇給制度が整っている
- シフト制により労働時間が明確に定められている職場が多い
個人店よりも福利厚生が整っているほか、ケーキ以外のさまざまな洋菓子の制作に挑戦できるのが強みです。
個人店で培った経験や技術はホテルでも十分に評価されるため、転職の際はホテル・宿泊業界の求人にも注目しましょう。
業界特化の転職エージェントでプロに相談する
転職を考えているものの「どんな職場が合うのかわからない」「求人の探し方がわからない」とお悩みであれば、業界特化の転職エージェントがおすすめです。
転職エージェントは求人の紹介だけでなく、自分のスキルや経験を洗い出し面接対策までサポートしてもらえます。特に宿泊業界に特化したエージェントであれば、ホテルや旅館のパティシエ求人にも精通しており、非公開の好条件求人も広く探せるでしょう。
転職を考えている方は挑戦したい業界に特化した転職エージェントに相談して、転職の道筋を探してみてください。
パティシエの仕事にお悩みなら離職・転職で新たなキャリアを見つけよう
パティシエが辞めたいと感じる背景には、本人の努力だけでは解決しにくい労働時間、人員配置、教育方法、キャリアパスなどの問題がある場合もあります。「辞めたい」と感じることを、ただちに本人の努力不足と考える必要はありません。
そのため今の職場環境にお悩みであれば、転職して仕事の負担を減らすのも大切な選択肢だといえます。ホテルのなかには、福利厚生、評価制度、キャリアパスなどが明文化されている職場もあります。
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