新型コロナウイルスの影響により、「旅館業界は今も厳しい状況が続いている」と考える方は少なくありません。
しかし、現在は観光需要の回復が進み、国内旅行者や訪日外国人の増加を背景に、人手不足に悩む旅館も増えています。
そこで今回は、旅館への転職を検討している方に向けて、旅館業界の年収実態や年収アップを目指す方法について解説します。
旅館に勤めた際の年収はどれくらい?
旅館への転職を考えるうえで、給与や年収は特に気になるポイントではないでしょうか。なかには、旅館は大手ホテルに比べて高収入を得にくいと考える方もいるでしょう。
ここでは、旅館業界の平均年収や職種別の年収について詳しく紹介します。
全国の旅館における平均年収
厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、宿泊業・飲食サービス業の平均月収は約26万9,500円です。これに年間賞与37万9,000円を加えて年収換算すると、約361万円となります。
全産業の平均年収が約426万円であることを踏まえると、宿泊業・飲食サービス業の年収水準はやや低い傾向にあるといえるでしょう。
ただし、このデータには飲食サービス業も含まれているため、旅館業の年収をそのまま示しているわけではありません。実際の年収は、施設の規模や地域、職種によって異なり、転職サイトや転職エージェントの調査でもさまざまな数値が公表されています。
接客担当(仲居)
旅館の接客を担う代表的な職種が仲居です。旅館の顔ともいえる存在で、お客様と接する機会が多いため、高い接客力や気配りが求められます。
仲居の仕事は、客室への案内だけではありません。荷物運びや食事の配膳、館内サービスの説明、布団の上げ下げ、アメニティの準備など、幅広い業務を担当します。
また、お客様の滞在時間外やチェックイン前には、客室や浴場の清掃を行う場合もあり、体力が求められる仕事です。
雇用形態は正社員に加え、契約社員やアルバイトも多く、勤務先によって収入に差があります。一方で、未経験から挑戦しやすい職種である点は大きな魅力です。
仲居をはじめとした接客担当の年収は、約338万円が目安です。
責任者
旅館の責任者とは俗にいう支配人です。女将も同様に責任者としての扱いになりますが、支配人は総責任者としての立場になります。
個人経営の旅館では支配人や女将は経営者一家が就いているケースがほとんどです。
まれに大手の企業が運営する旅館へ総責任者として求人が出されることがあります。
責任者として求められるのは管理能力。経営や人材管理に関する業務を行うため、一般の従業員よりも年収が高くなります。
募集要項では経験者が優遇され、最初は支配人候補として雇われるケースが多いでしょう。
責任者の年収は約435万円が目安です。
調理場
旅館で料理を提供するうえで、調理スタッフは欠かせない存在です。調理場では経験者だけでなく、未経験者が採用されることも少なくありません。未経験の場合は、皿洗いや調理場の清掃、食材管理などの補助業務からスタートするのが一般的です。
その後、経験を積みながら調理業務を担当し、実力や実績が評価されることで、料理長などの管理職を目指せます。
年収は経験や役職によって大きく異なります。見習い期間は比較的低い水準となる一方、技術や実績を積むことで待遇の向上が期待できます。
また、料理長や総料理長など上位ポジションに昇進すると、年収も大きく上がる傾向があります。
調理スタッフの年収は役職による差が大きいものの、平均年収は約489万円が目安です。
年収が異なる旅館の事情
旅館への転職を考える際、年収は特に気になるポイントの1つではないでしょうか。
もちろん、勤務地や福利厚生、働き方なども重要ですが、年収を重視して転職先を選ぶ方は少なくありません。
ただし、旅館の年収水準は施設によって大きく異なります。高い給与を提示する旅館もあれば、そうでない旅館もあり、収入は転職先によって大きく変わるのが実情です。
では、なぜ旅館によって年収に差が生まれるのでしょうか。その主な理由について解説します。
旅館の規模
旅館の年収は、施設の規模によって大きく異なります。
大規模な旅館は収容人数が多く、団体客や訪日外国人観光客を受け入れやすいので、繁忙期には安定した売上を確保しやすい傾向があります。そのため、人件費に余裕が生まれ、比較的高い給与水準を実現している施設も少なくありません。
一方、小規模な旅館は家族経営の場合が多く、受け入れ可能な宿泊人数にも限りがあります。そのため、売上規模が小さくなりやすく、従業員数や給与水準に影響することがあります。
ただし、施設規模だけで待遇が決まるわけではありません。小規模でも高い評価を得ている人気旅館は、客単価や稼働率が高く、従業員の待遇が充実しているケースもあります。こうした旅館では、高い接客力や専門的なスキルが求められる一方で、それに見合った給与や福利厚生が期待できるでしょう。
反対に、大規模な旅館であっても集客が安定しなければ、従業員の待遇改善が難しくなる場合があります。
このように、旅館の年収は施設の規模だけでなく、集客力や経営状況によっても大きく左右されます。
雇用形態
旅館業界では、雇用形態によって年収や待遇が大きく異なります。
主な雇用形態には、正社員、契約社員、アルバイト・パートがあります。
正社員は給与が安定しており、賞与や各種手当、福利厚生が充実しているケースが一般的です。その分、業務範囲や責任も大きくなる傾向があります。
一方、契約社員は非正規雇用として採用されることが多く、給与や福利厚生は正社員より限定的な場合も。ただし、勤務実績や評価によっては正社員登用制度を設けている旅館もあり、キャリアアップを目指せる環境もあります。
また、アルバイト・パートは時給制や日給制で働くケースが一般的です。勤務時間に応じて収入が決まるため、正社員と比べると年収は低くなる傾向があります。繁忙期と閑散期で勤務日数が変動することもあり、収入に差が生じやすい点も特徴です。
旅館業界では非正規雇用の求人も多く見られますが、経験を積みながら正社員を目指せるケースも少なくありません。
転職を検討する際は、給与だけでなく、賞与や福利厚生、正社員登用制度の有無などもあわせて確認することが大切です。
人気の高い地域
旅館の年収は、立地するエリアの集客力によっても大きく左右されます。
人気の観光地には多くの旅行者が訪れるため、旅館の稼働率が高くなりやすく、安定した売上を確保しやすい傾向があります。こうした観光地にある旅館は、比較的高い収益を確保しやすく、給与や福利厚生が充実しているケースも少なくありません。
また、観光地としての魅力に加え、旅館のサービスや評価が高ければリピーターの獲得にもつながります。その結果、経営が安定し、従業員の待遇向上につながる可能性もあるでしょう。
一方で、観光需要が限られる地域では集客が難しく、旅館の規模や収益にも影響が出やすくなります。そのため、給与水準やキャリアアップの機会は、人気観光地と比べて限られる場合があります。
ただし、立地だけで待遇が決まるわけではありません。地域に関係なく、高いサービス品質や独自の魅力によって多くの宿泊客を集めている旅館もあります。
旅館に転職して年収を増やす方法とは?
旅館へ転職したからといって、必ずしも年収が上がるとは限りません。
旅館業界は慢性的な人手不足に直面しており、人材確保のために給与や待遇の改善を進める施設も増えています。
しかし、給与水準や評価制度は旅館によって異なるので、転職先によっては現在より年収が下がる可能性もあります。そのため、転職先を慎重に選ぶことが重要です。
ここでは、旅館への転職で効率よく年収アップを目指すためのポイントを紹介します。
スキルを磨く
旅館への転職で年収アップを目指すなら、スキルを磨くことが重要です。
宿泊業界では、施設運営やサービス品質の向上に貢献できる人材が高く評価される傾向があります。特に接客スキルやマネジメント経験を持つ人は、採用や待遇面で有利になりやすいでしょう。
また、近年は訪日外国人観光客の増加に伴い、語学力を持つ人材への需要も高まっています。英語や中国語などで接客対応ができれば、海外のお客様へのサービス向上につながるため、大きな強みになるでしょう。
さらに、調理職であれば専門的な技術や豊富な経験も評価されます。旅館の料理は宿泊先を選ぶ重要な要素の1つであり、高い調理技術を持つ人材は施設にとって貴重な存在です。
このように、接客力や語学力、調理技術などの専門スキルを身につけることで、転職時の評価が高まり、年収アップにつながる可能性があります。
管理職に就く
年収アップを目指す方法の1つが、管理職への昇進です。
未経験で入社した場合でも、現場で経験を積み、実績や信頼を築くことで、主任や支配人などの管理職へキャリアアップできる可能性があります。
管理職になると役職手当が支給されることが多く、年収の向上も期待できるでしょう。また、スタッフのマネジメントや業務改善、施設運営など、より重要な役割を担うことになります。
管理職には、リーダーシップや問題解決力に加え、人材育成や企画力も求められます。スタッフが働きやすい環境を整え、お客様のニーズを的確に把握することで、サービス品質の向上にもつながるでしょう。
その結果、顧客満足度やリピート率の向上、旅館の業績改善に貢献できれば、自身の評価や待遇の向上につながる可能性もあります。
責任は大きくなりますが、その分やりがいも大きいポジションといえるでしょう。
良い条件の旅館を探す
年収アップを目指すのであれば、より条件の良い旅館へ転職することも有効な方法です。
転職先を選ぶ際は、年収だけでなく、福利厚生や各種手当、休日制度なども含めて総合的に判断することが大切です。
特に高級旅館や人気旅館は、比較的高い給与水準を設定しているケースが多く、年収アップを実現しやすい傾向があります。
一方で、こうした旅館では高い接客力や専門知識が求められることも少なくありません。これまでの経験に加え、語学力やコミュニケーション能力、立ち居振る舞いなども評価の対象となります。
また、面接では自身の強みや実績を適切にアピールすることも重要です。
転職活動を成功させるためには、希望する旅館について事前に情報収集を行い、求められるスキルや経験を把握したうえで準備を進めましょう。
旅館の年収について解説しました
旅館業界の年収は、他業種と比べて低い傾向があるといわれています。そのため、転職先の候補から旅館を外してしまう方もいるかもしれません。
しかし、近年は訪日外国人観光客の増加や旅行需要の回復を背景に、宿泊業界全体で人材不足が続いています。そのため、給与や福利厚生の改善を進め、人材確保に力を入れる旅館も増えています。
旅館への転職で年収アップを目指すには、条件の良い求人を選ぶことに加え、自身のスキルや経験を高めることも重要です。
接客力や語学力、マネジメント経験、専門的な調理技術など、旅館運営に貢献できる能力を身につけることで、転職時の評価や待遇の向上が期待できます。
自分に合った旅館を見極めながら、市場価値を高めていくことが、年収アップへの近道といえるでしょう。

