旅館への就職・転職を考える際、「年収はどれくらいなのか」「ホテルより給料が低いのではないか」と気になる方もいるでしょう。
旅館だけを対象にした公的な平均年収の統計は限られているため、正確な金額を一つに決めることはできません。
ただし、厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」では、ホテル・旅館の接客担当に対応する年収は362.4万円です。また、求人ボックスが2026年7月の掲載求人から算出した旅館の給与水準は、年収386万円が中央値となっています。
こうしたデータから考えると、旅館で働く場合は300万円台を年収の一つの目安として考えられるでしょう。
ただし、実際の年収は職種や役職、経験、勤務地、旅館によって大きく異なります。支配人や料理長などの管理職・専門職では、一般スタッフより高い給与が提示されるケースもあります。
この記事では、旅館で働く人の年収について、最新の統計や求人データをもとに解説します。年収アップを目指す方法や、求人を比較する際に給与以外で確認したいポイントも紹介するので、旅館への転職を検討している方は参考にしてください。
旅館の平均年収は300万円台が一つの目安
旅館で働く場合、年収300万円台が一つの目安になります。
ただし、「旅館で働くすべての人の平均年収」を示した公的統計があるわけではありません。そのため、複数のデータを確認したほうが実態をつかみやすいでしょう。
厚生労働省のjob tagによると、「接客担当(ホテル・旅館)」に対応する2025年の年収は362.4万円です。
一方、求人ボックスでは、2026年7月時点の旅館求人における給与水準の中央値は386万円でした。正社員求人で特に多い給与帯は312~375万円となっています。
数字が異なるのは、それぞれ対象としている人や算出方法が違うためです。
たとえばjob tagは実際に働いている人に関する統計をもとにしていますが、求人サイトのデータは現在募集されている求人の給与水準です。
そのため、「旅館の平均年収は必ず○○万円」と考えるのではなく、300万円台を一つの基準として、希望する職種や求人ごとに条件を確認するのがよいでしょう。
なお、job tagの統計も「接客担当(ホテル・旅館)」だけを完全に切り出した数字ではなく、対応する職業分類をもとに作成されています。あくまで給与相場を把握するための参考値として考えてください。
【職種別】旅館で働く人の年収・給与の目安
旅館には、仲居をはじめとする接客スタッフのほか、フロント、調理スタッフ、支配人などさまざまな仕事があります。
仕事内容だけでなく、給与水準にも違いがあります。
ここでは、「接客担当」「支配人」「調理スタッフ」の3職種を例に給与の目安を見ていきましょう。
接客担当・仲居
旅館の接客担当は、お客様の出迎えや客室への案内、食事の配膳、館内説明などを行う仕事です。
施設によっては、フロント業務や客室準備など複数の仕事を担当することもあります。
job tagによると、「接客担当(ホテル・旅館)」に対応する年収は362.4万円です。2024年度のハローワーク求人における求人賃金は月額23.4万円でした。
ただし、仲居だけを対象とした数字ではありません。
また、正社員だけでなく契約社員やパート・アルバイトとして働くケースもあるため、雇用形態によって収入は変わります。
転職する際は月給だけを見るのではなく、賞与や各種手当を含めた想定年収を確認しましょう。
関連記事:仲居に向いている人の特徴9選!向いていない人・適性チェックも紹介
支配人
旅館の支配人は、施設運営を担う責任者です。
スタッフのマネジメントだけでなく、売上管理、人材採用、サービス改善、宿泊プランの企画など、旅館によって幅広い仕事を担当します。
job tagでは、ホテル・旅館支配人の2024年度におけるハローワーク求人賃金は月額32.7万円です。接客担当の23.4万円と比べても、高い水準で募集されています。
一方、job tagに掲載されている年収統計は、必ずしも支配人だけを対象とした数字ではありません。そのため、「支配人の平均年収は○○万円」と単純に判断するのは避けたほうがよいでしょう。
支配人の場合は施設規模や担当範囲による差も大きいため、求人票の想定年収を個別に確認することが重要です。
調理スタッフ・板前
旅館において、料理は宿泊体験を左右する重要なサービスの一つです。
調理スタッフは仕込みや調理、盛り付けなどを担当し、経験を積むことで副料理長や料理長などへのキャリアアップも目指せます。
job tagによると、日本料理調理人(板前)に対応する年収は379.1万円です。また、2024年度のハローワーク求人賃金は月額28.2万円となっています。
ただし、この数字には旅館以外の日本料理店などで働く人も含まれています。
調理職は経験や技術によって待遇が変わりやすい仕事です。job tagでも、勤務する店舗の規模や業態、これまでの経験・技術によって給与に差が生じると説明されています。
特に料理長などの責任あるポジションを目指す場合は、調理技術だけでなく、原価管理やメニュー開発、スタッフ育成などの経験も転職時のアピール材料になります。
旅館によって年収に差があるのはなぜ?
同じ旅館業界でも、求人を見ると給与には大きな差があります。
求人ボックスが2026年7月の掲載求人から算出したデータでも、旅館の正社員求人の給与幅は年収312~812万円とされています。
もちろん、上限の金額を誰でも受け取れるわけではありません。
それでも給与幅が大きいことからわかるように、「旅館で働く=年収○○万円」と一括りにするのは難しいのが実情です。
年収に差が生まれる主な理由を見てみましょう。
職種・役職が違う
まず大きいのが、職種と役職です。
接客スタッフとして入社した場合と、支配人候補として採用された場合では、任される責任が異なります。
調理職でも、
- 調理補助
- 調理スタッフ
- 副料理長
- 料理長
など、経験や役職によって待遇は変わります。
年収を上げたい場合は、現在の仕事の延長線だけを見るのではなく、「次にどのポジションを目指せるか」まで確認しておくことが重要です。
経験やスキルが違う
これまでの経験も給与を左右します。
接客職であれば、接客経験だけでなく、
- 新人教育
- クレーム対応
- VIP対応
- 外国語での接客
- フロント・予約業務
- チームマネジメント
などの経験があれば、担当できる仕事の幅が広がります。
調理職なら、調理技術に加えてメニュー開発や原価管理、発注、スタッフ育成などの経験も強みになります。
特に中途採用では、「宿泊業界で何年働いたか」だけでなく、これまで何を任され、どのような成果を出してきたかを整理しておきましょう。
勤務する地域が違う
勤務地によっても求人の給与水準は異なります。
求人ボックスの2026年7月時点のデータでは、旅館求人の給与水準が最も高い地域は関東で、東京都は年収475万円となっています。一方、集計対象となっている地域の中では秋田県が320万円でした。
ただし、給与が高い地域ほど生活費も高くなる可能性があります。
地方の旅館では社員寮を設けているケースもあるため、勤務地を比較するときは年収だけでなく、家賃などの生活コストもあわせて考える必要があります。
雇用形態が違う
旅館では、正社員のほかに契約社員、パート・アルバイトなどさまざまな雇用形態があります。
正社員であれば賞与や昇給、各種手当の対象となる場合がありますが、具体的な条件は勤務先によって異なります。
求人票を見る際は「月給○万円」だけで判断せず、
- 雇用形態
- 賞与
- 昇給
- 各種手当
- 固定残業代
- 年間休日
- 福利厚生
まで確認しましょう。
旅館の求人は「年収」だけで比較しないことが大切
旅館への転職では、額面上の年収だけでは実際の生活水準を判断できないことがあります。
その理由の一つが、社員寮や食事補助などの福利厚生です。
たとえば、次の2つの求人があったとします。
| 求人 | 年収 | 住居費 |
| A | 350万円 | 自分で賃貸を契約・家賃7万円 |
| B | 330万円 | 社員寮・寮費1万円 |
この例ではAのほうが年収は20万円高くなります。
しかし、住居費だけで比べると、Aは年間84万円、Bは年間12万円です。単純計算では年間72万円の差があります。
税金や社会保険料などを考慮していないため、実際の手取り額をそのまま比較したものではありません。それでも、額面年収が高い求人ほど生活に余裕があるとは限らないことがわかるでしょう。
特に地方の旅館へ転職する場合は、給与とあわせて、
- 社員寮の有無
- 寮費
- 水道光熱費
- 食事・まかない
- 住宅手当
- 引っ越し補助
- 交通費
なども確認してみてください。
年収330万円でも住宅費を抑えられる求人と、年収380万円でも家賃や通勤費を多く負担する求人では、手元に残る金額が逆転する可能性があります。
「年収はいくらか」だけでなく、「その条件でどのような生活ができるか」まで考えることが、長く働ける職場を選ぶうえでは重要です。
旅館で年収400万円・500万円は目指せる?
旅館で働きながら、年収400万円以上を目指すことは可能です。
求人ボックスでは旅館の給与水準の中央値が386万円である一方、正社員求人全体では312~812万円まで幅があります。つまり、求人市場には400万円を超える給与を提示する求人も含まれています。
ただし、一般スタッフとして入社すれば自動的に400万円、500万円へ上がるわけではありません。
高い年収を目指すのであれば、次のようなキャリアを考える必要があります。
支配人・管理職を目指す
接客スタッフとして経験を積み、
スタッフリーダー
↓
マネージャー
↓
副支配人
↓
支配人
といった形で管理職を目指す方法があります。
支配人になると接客だけでなく、売上や人員、サービス品質など施設運営全体に関わるようになります。
そのため、接客力だけでなく、マネジメントや業務改善などの経験を積んでおくことが重要です。
料理長など専門性の高い職種を目指す
調理職であれば、専門性を高めることで給与アップを狙える可能性があります。
求人ボックスの旅館求人データでも、「和食料理長候補」という条件の求人は、旅館求人全体より給与水準が約27%高いとされています。
調理技術に加えて、
- メニュー開発
- 原価管理
- 食材の仕入れ
- 衛生管理
- スタッフ育成
など、厨房全体を管理できる経験を積むと、料理長候補など上位ポジションへの転職もしやすくなるでしょう。
より条件のよい旅館へ転職する
今の職場で昇給を待つだけでなく、より条件のよい旅館へ転職する方法もあります。
同じ仕事内容でも、施設によって給与や賞与、福利厚生は異なります。
特に、
「経験を積んでも給与がほとんど変わらない」
「上のポジションが空かない」
「そもそもキャリアアップの仕組みがない」
という職場では、本人の努力だけで年収を大きく上げることは難しい場合があります。
そのような場合は、自分の経験を評価してくれる旅館を探すことも選択肢です。
旅館への転職で年収を上げるためにできること
転職によって年収アップを目指す場合、「給与の高い求人に応募する」だけでは十分ではありません。
自分の経験を整理し、採用する旅館側に「なぜ高い給与で採用する価値があるのか」を伝えることも重要です。
自分の経験を職務経歴書で具体的に伝える
中途採用では、担当していた業務を並べるだけでなく、どのような役割を担ってきたのかを具体的に伝えましょう。
たとえば、「旅館で接客を担当」だけでは、経験の深さが伝わりません。
一方、「客室20室の旅館で接客を担当。新人3名の教育を担当し、繁忙期にはフロント業務も兼任」と書けば、担当範囲やマネジメント経験がわかります。
数字で示せる実績がある場合は、
- 担当した客室数
- 育成したスタッフ数
- 売上
- 客単価
- 口コミ評価
- クレーム件数
- 業務時間の削減
なども整理してみてください。
実績が数値化しにくい職種でも、「何を任されていたか」「どの程度の責任を担っていたか」を具体的に書くことで、経験を伝えやすくなります。
希望年収だけでなく現在の条件を整理する
転職活動を始める前に、
- 現在の基本給
- 賞与
- 残業代
- 役職手当
- 住宅手当
- 寮費
- その他の手当
を整理しておきましょう。
現在の月給だけを基準にすると、転職後に「年収は上がったけれど住宅補助がなくなり、実際の生活は苦しくなった」といったことも起こり得ます。
現在の条件と転職後の条件を、できるだけ同じ基準で比較することが大切です。
複数の求人を比較する
年収アップを重視するのであれば、1社だけを見て転職先を決めるのはおすすめできません。
同じ職種でも旅館によって、
- 基本給
- 賞与
- 手当
- 昇給制度
- キャリアパス
が違うからです。
また、想定年収が同じでも、「残業代を含めて400万円」「残業代を除いて400万円」では条件が大きく異なります。
給与を比較するときは、年収の数字だけでなくその内訳まで確認しましょう。
旅館求人の給与を見るときに確認したいポイント
旅館への転職で給与面のミスマッチを避けるには、求人票で次の項目を確認しておくことをおすすめします。
- 基本給はいくらか
- 月給に固定残業代が含まれているか
- 固定残業代は何時間分か
- 賞与はあるか
- 賞与の前年度実績はどれくらいか
- 昇給制度はあるか
- 役職手当や資格手当はあるか
- 深夜勤務がある場合は深夜割増賃金が支給されるか
- 社員寮はあるか
- 寮費や水道光熱費はいくらか
- 食事補助やまかないはあるか
- 年間休日は何日か
- 希望するポジションへの昇進事例があるか
特に注意したいのが、「月給」と「基本給」は同じとは限らない点です。
月給30万円と書かれていても、固定残業代や各種手当を含んだ金額の場合があります。
賞与が「基本給×○カ月」で計算される会社では、基本給の金額によって実際の年収にも差が出ます。
求人票だけではわからない場合は、応募時や面接時に確認しておきましょう。
関連記事:ホテルの固定残業代は避けるべき?求人票で確認したいポイントを解説
旅館の年収に関するよくある質問
旅館で働く人の平均年収はいくらですか?
旅館だけを対象とした公的な平均年収の統計は限られています。
参考になるデータとして、厚生労働省のjob tagでは「接客担当(ホテル・旅館)」に対応する年収が362.4万円です。また、求人ボックスの2026年7月時点の旅館求人では、給与水準の中央値が386万円となっています。
そのため、300万円台を一つの目安として考えつつ、実際の求人条件を確認するのがよいでしょう。
仲居の年収はいくらですか?
仲居だけを対象とした正確な平均年収を示す公的統計は確認しにくいため、「仲居の平均年収は○○万円」と断定することはできません。
参考として、仲居を含む「接客担当(ホテル・旅館)」に対応するjob tagの年収は362.4万円です。
実際の年収は、雇用形態や勤務地、経験などによって異なります。
旅館の支配人は給料が高いですか?
一般の接客スタッフより高い給与が提示される求人があります。
job tagの2024年度ハローワーク求人統計では、接客担当の求人賃金が月額23.4万円なのに対し、ホテル・旅館支配人は月額32.7万円でした。
ただし、支配人の給与は施設規模や担当業務によって異なるため、実際の求人条件を確認してください。
旅館で年収500万円を目指すことはできますか?
求人市場には年収500万円を超える旅館求人もあります。求人ボックスの2026年7月時点のデータでは、旅館の正社員求人の給与幅は312~812万円でした。
ただし、500万円以上の求人では管理職経験や調理などの専門スキルを求められる場合があります。支配人や料理長などへのキャリアアップも含めて考えるとよいでしょう。
旅館への転職は年収と働き方をあわせて考えよう
旅館で働く人の年収は、300万円台が一つの目安です。
一方で、実際の給与は職種や経験、役職、勤務地などによって大きく異なります。
そのため、「旅館業界だから年収が低い」と考えて転職先から外す必要はありません。
大切なのは、業界全体の平均だけを見るのではなく、自分の経験で応募できる求人がどの程度の給与を提示しているのかを確認することです。
さらに、地方の旅館では社員寮や食事補助などによって生活費を抑えられる場合もあります。
転職先を比較するときは、年収+福利厚生+働き方+今後のキャリアまで含めて考えてみましょう。
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