ホテルに就職した後、仕事内容や労働条件にギャップを感じ、転職や早期離職を考える人もいます。ホテルや旅館などの宿泊業で長く楽しく活躍するためには、就職したことへの後悔や失敗につながる要因を理解したうえで、適切な流れで就職先を探すことが大切です。
そこでこの記事では、ホテルへの就職で生じるよくある後悔と失敗例を確認します。そのうえで、ホテル業界の仕事におけるやりがいとメリット、合っている人の特徴、ホテルへの就職・転職の成功ポイントを紹介しましょう。
ホテル就職で生じやすい後悔・失敗事例とは
ホテルで働くなかで生じる後悔には、いくつかのパターンがあります。就職後の後悔を最小限にするためには、主な理由やパターンを理解したうえで、そういった要因を回避できる職場や職種選びをすることが大切です。
この章では、8つのポイントを紹介しましょう。
そもそもやりたい仕事ではなかった
「そもそもやりたい仕事ではなかった」と後悔する背景には、以下の2つの要因が考えられます。
- 自分の希望とは異なる部署(職種)に配属された
- そもそも宿泊業にあまり興味はないものの、自分にもできそうだと思い応募してみた
前者は、配属希望が通らず、実際に配属された部署や担当業務が自分に合わなかったパターンです。後者は、「ドアマンになりたい」や「フロント業務に携わってみたい」などの明確な目的や憧れがないなかでホテルに入ったものの、スキルや適性の部分で自分に合わなかったと感じるケースでしょう。
こうした後悔の背景には、入社前の期待と入社後の現実にギャップを感じる「リアリティショック」がある場合もあります。
職場の人間関係が悪かった
以下のような人間関係の悪さも、ホテルに就職したことの後悔につながる大きな要因です。
- 上司の言葉や性格がきつすぎる
- チームメンバー同士が不仲であり、協力し合う姿勢がない
- 新人や若手がクレームやトラブルに直面しても、それを先輩がフォローすることはない
- 家庭の事情で休みをとるたびに嫌味を言われる など
人間関係の悪さは、仕事のしづらさにもつながります。
特に入社したばかりの新人や若手の場合、先輩からの指導やフィードバック、フォローが不可欠です。人間関係が悪いと、覚えるべき仕事の習得も遅くなり、なかなか一人前になれないという問題も生じるでしょう。
また、人間関係が悪い環境では、楽しさややりがいも見出しづらくなります。
労働条件に相違があった
会社説明会や面接時に提示された労働条件と、実際の内容に相違があった場合、ワーク・ライフ・バランスに支障が生じて、そのホテルで長く働き続けることが難しくなる可能性があります。
ちなみに労働基準法では、使用者に対し、労働契約を結ぶ際に賃金や労働時間などの労働条件を明示するよう義務付けています。一定の事項は、原則として書面などで明示しなければなりません。そのため原則として、労働条件通知書に記載された条件で働くことになります。
しかし明示された労働条件と実際の労働条件が異なる場合は、労働基準法上の問題となる可能性があります。気になる点がある場合は、まず会社に確認し、必要に応じて労働基準監督署などへ相談しましょう。
想像以上にハードな仕事だった
ホテルマンが「ハードな仕事」と感じる要因には、主に以下の2つがあります。
- 【精神的なハードさ】人間関係の悪さ、クレームやカスハラの多さ、仕事を覚えられないことによる苦痛 など
- 【体力的なハードさ】シフト勤務による生活の不規則さ、立ち仕事、重い荷物を持つ業務の多さ など
具体的なハードさは、職種や職場環境ごとに異なります。新人ホテルマンの場合、不慣れな環境で上司や先輩に気を遣ったり、シフト勤務の不規則さに慣れなかったりすることも多いはずです。その場合、精神と体力の両方でハードと感じてしまうでしょう。
希望の休みが取りづらかった
ホテルや旅館では、土日祝日や大型連休が繁忙期になりやすいため、平日に休日を取る勤務形態も一般的です。
人手不足の職場では、希望休の日程を調整しなければならないこともあります。希望休や慶弔休暇の扱いは、就業規則や職場の運用によって異なるため、事前に確認しましょう。
たとえば以下のような理由で希望休を申請することもあるでしょう。
- 子どもの運動会がある
- 大切な家族や友人が帰省する など
また、宿泊業にありがちな「土日祝日は出勤、平日は休み」のスケジュールが当たり前になると、土日祝日休みの友人や家族との予定が合わず、プライベートの充実が難しくなることもあるでしょう。
理不尽なカスタマーハラスメントやクレームが多かった
理不尽なカスハラ(カスタマーハラスメント)やクレームの多さも、ホテルに就職したことを後悔させる要因です。クレームには、商品やサービスへの正当な意見や改善要求も含まれます。一方、要求の内容が著しく妥当性を欠く場合や、要求の手段・態様が社会通念上不相当で、従業員の就業環境を害する場合は、カスタマーハラスメントに該当する可能性があります。
どちらの種類にせよ、頑張って提供したサービスなどが否定され、謝罪を求められたりする状況は、スタッフにとって精神的ダメージになることが多いでしょう。また、カスタマーハラスメントや対応が難しいクレームが続くと「こんな仕事を選ぶのではなかった…」などの後悔も生じやすくなるはずです。
人手不足や社会情勢に左右されやすい
コロナ禍がそうであったように、ホテルや旅館などの宿泊業は、景気や社会情勢、人手不足といった外的要因の影響を受けやすい傾向があります。
たとえばコロナ禍では、感染や濃厚接触による従業員の欠勤が重なり、人手不足が生じた施設もありました。こうした状況からも、宿泊業は感染症、災害、景気、国際情勢などの影響を受けやすい業界だといえます。雇用形態や勤務先によっては、シフトや労働時間に影響が出ることもあります。
キャリアパスが狭かった
これは他の業種や企業にも言えることですが、キャリアパスが狭すぎて昇進できる可能性が低い場合、後悔やモチベーションの低下につながる可能性があります。
具体的には、たとえばホテルの総支配人は通常1名であるため、すべての従業員がそれを目指して昇進できるとは限りません。また、そもそも自分が働くホテルにコンシェルジュという職種がない場合、社内ではフロントからコンシェルジュへのステップアップも難しいでしょう。
仕事を通じて多くのスキルを身に付け、一流のホテルマンとしてキャリアアップをしたいと考える人の場合、入社前に勤務先の教育制度や実現可能なキャリアパスなどにも関心を持つ必要があるでしょう。
ホテル業界にもメリット・やりがいはある
ホテル業界の仕事は、ここまで紹介した後悔ばかりが生じるものではありません。ホテルスタッフのなかには、多くのメリットややりがいを得るなかで、後悔とは無縁の毎日を過ごす人たちも存在します。
この章では、ホテルの仕事で得られるメリットややりがいを紹介しましょう。
接客マナーやサービススキルが身につく
以下のような職種に就くと、日々の業務や研修を通して、接客マナーやコミュニケーションスキルを身につけられます。
- フロント
- コンシェルジュ
- ドアスタッフ(ドアマン/ドアガール)
- ベルスタッフ(ベルボーイ/ベルガール)
- レストランのホール など
上記の業務で身に付けたマナーや礼儀正しさは、他の接客業でも役立つものです。転職を繰り返しながらステップアップしたい人にも、ホテルの仕事は多くのメリットをもたらすでしょう。
語学力を活かせる
訪日外国人旅行者が多い地域やホテルでは、外国語を使って接客する機会があります。そのため、外国語での対応力は、こうした職場への応募時に評価される可能性があるでしょう。
宿泊業や接客業が未経験でも、TOEIC®などの資格やスコアは語学力を示す材料の一つになります。ただし、職種によっては資格だけでなく、実際の会話力や接客経験も重視されます。
お客様からの感謝の言葉を直接受け取れる
お客様から直接感謝の言葉を受け取れることを、仕事のやりがいに挙げるスタッフもいます。
このメリットは、接客業の魅力の一つです。また、ホテルフロントやコンシェルジュの場合、お客様の要望に応えたり、困り事に対処したりすることで「ありがとう」と言われる機会が特に多くなります。
仕事の失敗やクレームなどで就職を後悔する場面があっても「ありがとう」の言葉に救われることもあるでしょう。
仲間と助け合う仕事や職種も多い
ホテルでは、以下のようなお客様のニーズへの対応や目標達成を目指して、さまざまな部門のスタッフが連携・協力するケースが多いです。
- 【要望】奥様の誕生日を祝うために、客室にケーキと花束を届けてほしい
- 【要望】このホテルで結婚式を行うので、遠方の親族や友人のために10室の部屋を確保してほしい
- 【企画】新年のイベント開催に向けて、レストランとフロント部門で企画を考える など
1つの課題や目標に対してみんなで協力し合うと、一体感が生まれ、職場への愛着が高まることがあります。さらに、課題を乗り越えた経験が自信となり、より高いサービスの実現に向けたチャレンジ精神が芽生えることもあるでしょう。このようにさまざまな部門担当者と協力できることは、ホテルで仕事をする醍醐味の一つになります。
ホテル勤務に合っている人の特徴とは?
ホテルへの就職で後悔を生じさせないためには、「自分がホテルの仕事に合っているかどうか?」を客観的に見ることも大切です。仕事への適性は従事する職種やポジションごとに異なりますが、一般的には以下の特徴を持つ人は、後悔よりもやりがいが得られやすい傾向があるでしょう。
コミュニケーションを楽しめる人
ホテルでは、お客様や同僚といったさまざまな人とのコミュニケーションを図りながら仕事を進めることが多いです。
特にフロント・コンシェルジュ・レストランのホールといった接客担当は、老若男女さまざまなお客様とのコミュニケーションを図ることになるでしょう。近年では、インバウンドの影響から外国人のお客様と関わるケースも多くなっています。
お客様の要望に応えるうえでは、他部署のスタッフや取引業者との調整や交渉も必要です。こうしたコミュニケーションを面倒と感じることなく、ポジティブに楽しめる人なら、ホテルへの就職による後悔は生じにくいでしょう。
お客様の困り事や課題解決などに喜びを感じられる人
ホテルの仕事にやりがいを見出すためには、以下のようなホスピタリティ精神が旺盛であることも大切です。
- お客様の困り事を解決したい
- お客様に喜んでもらいたい
- チームの仲間を助けたい など
お客様や他スタッフからの要望のなかには、頭を悩ませるような内容があるかもしれません。しかし、上記のようなホスピタリティ精神が旺盛であれば、相手が喜んでくれる姿を想像しながら、困難な課題にも積極的に立ち向かえるでしょう。また、周囲の困り事や課題と向き合う姿勢は、誠実なホテルスタッフであるために大事な要素となります。
臨機応変な対応を行える人
ホテルでは、想定外の出来事が起こることもあります。
こうした出来事に対してパニックを起こすことなく冷静かつ柔軟な対応を行えることも、ホテルマンに必要な資質です。つまり、マニュアルや安全上のルールを踏まえながら、状況に応じて柔軟に対応する姿勢が求められます。自分だけで判断できない場合は、速やかに上司や関係部署へ相談することも重要です。
具体的には、お客様の体調不良、設備トラブル、急な予約変更といった出来事に対して柔軟な対応を行えると、ホテルの仕事へのストレスや後悔は生じにくいでしょう。
後悔しないホテル就職・転職のコツと成功ポイント
ホテルへの就職後に「こんなはずじゃなかった」と感じる後悔・失敗を防ぐためには、求人への応募や比較検討をするなかで、成功につながるコツを実践していく必要があります。ここでは、やりがいや満足度の高い仕事を選ぶために、実践したいポイントを7つ紹介しましょう。
自己分析でスキル・希望条件・適性の棚卸しをする
以下のような自己分析は、自分に合うホテルへの就職・転職を行ううえで不可欠な作業です。
- ホテルの仕事で活かせそうなスキル・経験は何か?
- 自分はどのようなホテルマンになりたいか?
- 自分に不向きな職種はあるか?
- 絶対に譲れない労働条件はあるか?
- 環境面で求めることは何か? など
なぜなら、自分の適性・スキル・希望条件などを把握することで、求人票を見たり面接官の話を聞いたりするなかで、「自分に合うかどうか」を判断しやすくなるからです。
上記のような言語化はなるべく具体的に行うことが大切です。たとえば「休みが柔軟に取れる」よりは「子どもの学校行事の日は必ず休める」まで具体的な言語化をしたほうが、面接担当者への質問もしやすくなるでしょう。
業界研究を行う
自分に合う求人を選ぶためには、先述の「自分を知る作業」に加えて、「相手を知る作業」も必要です。ここでいう相手とは、ホテル業界や応募先企業のことです。
たとえばホテル業界には、シティホテル、リゾートホテル、ビジネスホテルなどがあり、提供サービスや客層などは種類ごとに異なります。また、インバウンド需要の増加や人手不足なども、ホテル業界ならではのトピックです。
このような種類や動向に触れると、求人を出しているホテルの業界内での位置づけも見えてくるでしょう。また、たとえば幅広い宿泊目的のお客様に対応したい場合は、シティホテルや大型リゾートホテルなどが候補になります。希望する職種が実際に設けられているかも確認しましょう。
応募前に「ホテル業界とはどういうものなのか?」を詳しく理解しておくと、入社後の後悔につながるリアリティショックも起こりにくくなるでしょう。
志望動機で「なぜそのホテルなのか?」を明確にする
応募先を選び、志望動機を考える際は「なぜそのホテルを志望するのか」を明確にすることが大切です。他のホテルとの違いを整理することで、志望動機に具体性と説得力を持たせられます。
また、自分の希望や将来像だけを伝えるのではなく「これまでの経験や強みを活かし、ホテルにどのような価値を提供できるか」という視点を盛り込みましょう。また、志望動機に企業理念の内容を添えると、企業に高い関心を持っていることのアピールにもなるでしょう。
実際にホテルを利用してみる
ホテルスタッフの表情や雰囲気は、ホームページを見ただけではわからない部分です。そこまで詳しく知りたい場合は、「百聞は一見に如かず」で実際にホテルを利用してみるのも一つです。
実際にお客様として宿泊してみると、「フロントスタッフは生き生きとした表情で接客しているか?」や「設備のメンテナンスや清潔感の維持は、しっかり行われているか?」などもわかるでしょう。
また一流の接客を行うホテルの場合、フロントやレストランのホールスタッフと会話をするなかで「私もこの一員として働いてみたい」というポジティブな志望動機が生まれるかもしれません。そこで得た気づきや印象は、志望動機に記載できるでしょう。
求人票を丁寧に確認する
自分で応募先ホテルを探す際には、求人情報を丁寧にチェックすることが大切です。その際に大事なことは、以下のポイントになります。
- 【研修制度が充実しているか?】
⇒研修の内容や対象者、実施頻度を確認すると、入社後にどのようなスキルを学べるかを判断しやすくなります。 - 【年間休日数はどのくらいか?】
⇒厚生労働省の令和6年就労条件総合調査では「宿泊業、飲食サービス業」の1企業平均年間休日総数は100.3日でした。ただし、勤務先による差が大きいため、求人ごとに確認する必要があります。 - 【どういった福利厚生制度があるか?】
⇒寮・食事などの補助や有給休暇・特別休暇制度。休暇制度は取得実績も見ておくと良い。
求人票を細部まで確認しておくと、応募前の問い合わせや面接時の質問も行いやすくなります。求人票のチェックでは、複数のホテルを比較することも大切です。同じ項目で複数の求人を比べてみると、標準的な労働条件も見えてくるでしょう。
アルバイトやインターンシップで働いてみる
「接客の仕事が自分にできるかわからない」や「ハウスキーパーの体力面が気になる」などの不安がある場合は、正社員求人に応募する前に、アルバイトやインターンシップでホテルの仕事を体験してみるのも一つです。企業によっては、中途採用の応募者向けに、職場見学や短期間の就業体験を設けていることもあります。
アルバイトやインターンシップで仕事を体験してみると、自分に合うかどうかの判断もしやすくなります。また、「とてもやりがいがある職種だが、この部分は少し大変かも…」といった気づきが得られると、社員として入社した後のリアリティショックも起こりにくくなるでしょう。
ホテル業界に特化した転職エージェントを利用する
ホテルへの就職による後悔を減らすためには、宿泊業に特化した転職エージェントを活用するのがおすすめ。転職エージェントの大きな特徴は、アドバイザーから転職活動に関するさまざまなサポートを受けられることです。
たとえば、アドバイザーによる経験・スキル・希望条件などのヒアリングは、自己分析および求人マッチングの有効性を高めるものでしょう。また、アドバイザーはホテル業界ならではの問題やリスクも熟知しているため、後悔しない転職をするうえで良き相談相手になるはずです。
はじめての就職・転職でさまざまな不安がある人こそ、転職エージェントをうまく活用したほうがよいでしょう。
ホテル就職の後悔に関するよくある質問
最後に、ホテルへの就職で後悔や失敗に関連するよくある質問と回答を紹介しましょう。
ホテル就職で最も多い後悔の理由とは?
ホテルへの就職・転職で起こる後悔は、以下のようなリアリティショックによるものです。これらは理想と現実のギャップとも言えるでしょう。
- こんなにクレームが多いとは思わなかった…
- こんなに人間関係が悪いとは思わなかった…
- こんなに休みが取りづらいとは思わなかった…
リアリティショックによる後悔を防ぐためには、自己分析と業界・企業分析をしっかり行ったうえで、自分に合いそうな求人に応募をすることが大切です。
未経験からホテルに就職したら後悔する?
フロント、レストランサービス、客室清掃などでは、未経験者を対象とした求人も見られます。
未経験者歓迎で、研修内容や現場の指導体制が整っている求人であれば、初めてホテルに就職する人でも、業務を段階的に学びやすくなります。
未経験からの就職・転職で不安がある場合は、どのような教育制度があるのかを面接で確認するとよいでしょう。
自分に合う求人を選び後悔のないホテル就職を
ホテルへの就職では、リアリティショックを感じたときに「こんなはずじゃなかった」などの後悔を覚える方が多い傾向があります。しかしその一方で、自分のスキル・適性・希望条件に合うホテルに入った場合、大きなやりがいや満足感を得られるケースもあります。
後悔が生じない就職をするためには、自己分析と業界分析、細かな求人チェックと比較検討などが必要です。こういった作業に不安があり、何から始めたらいいのかわからない場合は、宿泊業に特化した転職エージェントに相談をしてみてください。転職エージェントのアドバイザーと二人三脚で活動を進めると、自分に合う就職先が見つかりやすくなります。

