MENU

マスツーリズムとは?意味・歴史・問題点と今後の観光を解説

モダンなホテル客室

マスツーリズムとは、観光旅行が一部の富裕層から一般大衆へと広がった現象を指します。

第二次世界大戦後の経済成長を背景に、米国や欧州、日本などの先進国を中心に、団体でのパッケージツアーが普及しました。ただし、画一的な大量送客が環境破壊やオーバーツーリズムを招いた側面も見逃せません。

本記事では、マスツーリズムの意味や歴史的背景、特徴、問題点に加え、その反省から生まれた新しい観光について解説します。

観光の移り変わりを体系的に理解すれば、これからの宿泊業を考える視点が得られます。

目次

マスツーリズムとは?観光が大衆へ広がった現象

マスツーリズムとは、観光が大衆の間に広く行われるようになった現象を指す言葉です。

第二次世界大戦後の先進国で広がり、富裕層に限られていた旅行を一般の人々も楽しめるようになりました。

マスツーリズムを理解するうえで押さえたい点は、以下のとおりです。

  • マスツーリズムの語源と言葉の意味
  • マスツーリズムを象徴する団体パッケージツアー
  • マスツーリズムとニューツーリズムの違い

それぞれを順番に見ていきましょう。

マスツーリズムの語源と言葉の意味

マスツーリズムの「マス」は、英語で大衆や大量を意味するmassに由来する言葉です。ツーリズムは観光や旅行を指すため、二語を合わせると「観光の大衆化」という意味になります。

かつて旅行は富裕層の特権でしたが、大衆へと広く開かれた点に言葉の核心があります。

国際観光の分野で使われ始めた用語で、日本語では大衆観光と訳される場合もあるでしょう。大量の旅行者がまとまって移動する状況そのものを指す点も特徴です。

言葉の成り立ちを押さえておくと、後述する特徴や課題も理解しやすくなります。

マスツーリズムを象徴する団体パッケージツアー

マスツーリズムを象徴するのは、旅行会社が企画する団体パッケージツアーです。

添乗員が引率し、決められた日程で有名観光地を効率よく巡る形が主流でした。交通や宿泊、食事がひとまとめになり、個人で手配する手間がかかりません。

料金も団体割引によって安く抑えられ、多くの人が手軽に遠方へ出かけられるようになりました。旅行の大衆化を支えた中心的な仕組みといえます。

効率と低価格の追求は、のちの画一化という指摘にもつながる流れを生みました。

マスツーリズムとニューツーリズムの違い

両者の違いは、定番観光地を効率よく巡る画一的な旅か、テーマ性や体験・交流を重視する旅かという点にあります。

マスツーリズムが大人数で定番地を巡るのに対し、ニューツーリズムは個人の興味に沿った体験や交流を重視します。

両者の主な違いを、目的や規模などの観点から整理すると以下のとおりです。

観点マスツーリズムニューツーリズム
主な目的有名観光地の周遊体験・交流・学び
規模大人数の団体少人数・個人旅行
旅程画一的なパッケージ自由度の高い旅程
価値非日常の名所巡りその土地ならではの本物体験

ニューツーリズムは、マスツーリズムへの反省に加え、旅行者ニーズの多様化や地域資源を活用した観光振興の流れの中で広がった潮流といえます。

両者の違いを押さえると、観光の移り変わりがより立体的に見えてきます。

マスツーリズムが世界と日本に広がった歴史的背景

マスツーリズムは、戦後の経済成長と交通の発達を背景に拡大しました。

豊かさが社会に広がり、移動手段が大衆化したことで、観光は一部の特権から万人の楽しみへ変わりました。

世界と日本で大衆観光が広がった背景は、以下のとおりです。

  • 第二次世界大戦後の経済発展と所得の向上
  • ジェット旅客機の就航による移動の大衆化
  • 日本では高度経済成長期と大阪万博が契機

順を追って確認していきましょう。

第二次世界大戦後の経済発展と所得の向上

マスツーリズムの基盤は、戦後の経済発展による所得水準の向上にあります。

大量生産と大量消費の時代が訪れ、人々の暮らしに経済的なゆとりが生まれました。それまで旅行に手が届かなかった層も、休暇に出かけられるようになります。

アメリカでは1950年代に、西欧では1960年代に大衆観光が形づくられたとされます。所得の伸びが、旅行需要を一気に押し上げたのです。

経済的な豊かさの広がりこそが、観光を大衆のものへ変えた原動力でした。

ジェット旅客機の就航による移動の大衆化

移動の大衆化を支えたのは、ジェット旅客機の就航による輸送力の拡大です。

1950年代後半からジェット旅客機が普及し、遠距離の移動が速く安くなりました。海外旅行が一部の人だけのものではなくなっていきます。

輸送力が高まったことで、旅行会社は大量送客を前提としたツアーを組めるようになりました。観光地には一度に多くの旅行者が訪れるようになったのです。

技術の進歩が、世界規模の大衆観光を可能にしたといえるでしょう。

日本では高度経済成長期と大阪万博が契機

日本では、高度経済成長期の所得増加に加え、1964年の東海道新幹線開業、1970年の大阪万博、ジャンボジェット機の就航などが旅行の大衆化を後押ししました。

1960年代以降は、社員旅行や修学旅行も広く定着し、団体で温泉地や名所を訪れる旅行が盛んになります。

1970年の大阪万博は、多くの人が遠方へ出かけるきっかけとなりました。この時期には、大型ホテルや観光施設の整備も進みます。

こうして日本の大衆観光は、高度経済成長期に本格化していきました。

マスツーリズムの主な特徴4つ

マスツーリズムには、団体行動と画一性という共通した特徴があります。

大量の旅行者を効率よく送り出す仕組みから、いくつかの共通点が生まれました。

マスツーリズムの主な特徴は、以下の4つです。

  1. 大人数の団体で行動する
  2. 行き先が定番の有名観光地に集中する
  3. 旅行会社のパッケージツアーが中心となる
  4. 画一的で観光客向けに演出された体験が多い

それぞれの特徴を順番に確認していきましょう。

① 大人数の団体で行動する

第一の特徴は、大人数がまとまって移動する団体行動です。

社員旅行や修学旅行、町内会の親睦旅行などが代表例です。旗を持つ添乗員に従い、集団で行動する光景が各地で見られました。

個人で計画する必要がなく、誰もが手軽に参加できる点が魅力でした。団体割引によって、費用を抑えられる利点もあります。

大勢で同じ行程をたどる点が、後述する画一性にもつながっていきます。

② 行き先が定番の有名観光地に集中する

第二の特徴は、誰もが知る定番スポットへの集中です。

テレビや雑誌で紹介される有名観光地が、旅行先として選ばれました。海外ではハワイやグアムなどの南国リゾートが人気を集めます。

国内ではアクセスのよい大規模な温泉地が、社員旅行の定番となりました。有名な場所を訪れること自体が、旅の目的になっていたのです。

限られた人気スポットに旅行者が集まる傾向が、強く見られました。

③ 旅行会社のパッケージツアーが中心となる

第三の特徴は、旅行会社が企画するパッケージツアーです。

交通や宿泊、食事をひとまとめにした商品が、旅行の主流を占めました。利用者は申し込むだけで、複雑な手配から解放されます。

効率を重視した日程が組まれ、短期間で多くの名所を巡る形が好まれました。大量送客を前提とした価格設定が、旅行の敷居を下げたのです。

手軽さと安さを両立した商品設計が、大衆観光の拡大を後押ししました。

④ 画一的で観光客向けに演出された体験が多い

第四の特徴は、観光客向けに演出された画一的な体験です。

多くの人が同じ場所を巡り、似たような土産を買う傾向が見られました。地域の日常よりも、旅行者が期待するイメージが優先されがちです。

現地の踊りや行事が、観光ショーとして整えられる例もあります。ありのままの姿より、非日常の演出が好まれる傾向にありました。

画一的な体験は、やがて旅の満足度をめぐる課題へとつながっていきます。

マスツーリズムが抱える問題点と弊害

マスツーリズムの拡大は、環境や地域社会への負荷という問題も生みました。

大量の旅行者が特定の場所へ集中することで、さまざまなひずみが表面化しました。

マスツーリズムが抱える主な問題点は、以下のとおりです。

  • 観光地の環境破壊と自然環境への負荷
  • オーバーツーリズムによる地域住民への影響
  • 地域文化の商業化と画一化

順番に見ていきましょう。

観光地の環境破壊と自然環境への負荷

マスツーリズムの第一の問題は、観光開発による自然環境への負荷です。

大規模なリゾート開発が進み、森林や海岸の生態系が損なわれる例が相次ぎました。大量の旅行者によるごみや排水も、自然に負担をかけます。

美しい景観を求めて訪れた観光が、その景観を傷つける皮肉な結果も生みました。環境保護を訴える反対運動が起こった地域もあります。

自然への負荷は、観光地の価値そのものを揺るがしかねない問題でした。

オーバーツーリズムによる地域住民への影響

マスツーリズムの第二の問題は、観光客の集中による地域住民への影響です。

特定の地域や時間帯に旅行者が集中すると、混雑や交通渋滞が発生し、ごみのポイ捨てや騒音などのマナー違反も住民の生活に影響を与えます。

こうした状態はオーバーツーリズムと呼ばれ、近年の大きな課題となっています。観光庁も、混雑緩和やマナー啓発、地域関係者による協議、計画策定、受入環境の整備などを支援しています。

観光客の受け入れと住民の暮らしをどう両立するかが、各地で問われています。

参考:オーバーツーリズムの未然防止・抑制に向けた取組|観光庁

地域文化の商業化と画一化

第三の問題は、観光向けに進む文化の商業化と画一化です。

土産物や催しが観光客向けに整えられ、地域固有の文化が薄れる例があります。どこを訪れても似た商品が並ぶ状況も、各地で見られました。

本来の暮らしや伝統が、観光のために作り替えられてしまう懸念も指摘されます。地域の個性が失われれば、長期的な魅力の低下にもつながります。

文化の画一化は、旅の多様性を狭める課題として意識されてきました。

マスツーリズムの反省から生まれた新しい観光

こうした反省から、持続可能性や体験を重視する観光が広がりました。

大量送客を前提とした旅から、地域や環境に配慮した旅へと関心が移っています。

マスツーリズムの反省から生まれた代表的な観光は、以下のとおりです。

  • サステナブルツーリズム
  • エコツーリズム
  • ニューツーリズム

それぞれの特徴を確認していきましょう。

サステナブルツーリズム

サステナブルツーリズムは、環境や地域社会の持続可能性を重視する観光です。

自然環境や文化、地域経済の保全と観光振興を両立させる考え方です。将来世代に資源を引き継ぐことを重視します。

国も持続可能な観光地域づくりを進めており、観光庁は国際基準に準拠した「日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)」などを整備しています。観光地が長く愛されるための土台といえるでしょう。

考え方の詳細は、関連記事もあわせてご覧ください。

関連記事:サステナブルツーリズムとは?意味や定義・事例・メリットと課題を解説

エコツーリズム

エコツーリズムは、地域の自然や歴史、文化の魅力を学びながら、環境への理解を深める旅です。

屋久島や西表島など、貴重な自然を持つ地域で取り組みが広がっています。立ち入り制限やガイド同伴によって、自然への負荷を抑える工夫もあります。

関連記事:エコツーリズムとは?意味や具体例・メリットと課題をわかりやすく解説

ニューツーリズム

ニューツーリズムは、個人の興味に沿った体験型の旅です。

農業体験やロケ地巡りなど、テーマ性のある旅行が含まれます。見るだけでなく、体験や交流に価値を置く点が特徴です。

少人数でじっくり楽しめるため、旅の満足度が高まりやすい傾向があります。地方創生の手段として、自治体が力を入れる例も増えました。

旅のスタイルの変化は、関連記事もあわせて参考になさってください。

関連記事:ニューツーリズムとは?主な種類と国内事例を徹底解説

マスツーリズムに関するよくある質問

マスツーリズムとオーバーツーリズムの違いは?

両者の違いは、観光の大衆化という現象か、その弊害かという点です。

マスツーリズムは観光が大衆へ広がった現象全体を指します。オーバーツーリズムは、その結果として観光客が集中しすぎて生じる弊害を指す言葉です。

マスツーリズムはいつから始まった?

マスツーリズムは、第二次世界大戦後の経済成長期に広がりました。

アメリカでは1950年代、西欧では1960年代に形成されたとされます。日本では高度経済成長期に定着し、欧米に続く形で広がりました。

マスツーリズムのメリットとデメリットは?

メリットは旅行の大衆化、デメリットは環境や地域への負荷です。

誰もが手軽に安く旅行できるようになった点が、最大のメリットです。一方で、環境破壊やオーバーツーリズムを招いた点がデメリットといえます。

マスツーリズムを理解し変化する観光に備えよう

マスツーリズムとは、戦後に観光が大衆へ広がった現象です。

団体パッケージツアーを中心に先進国で普及し、旅行を多くの人に開かれたものにしました。その一方で、環境破壊やオーバーツーリズムという課題も残されています。

現在は、持続可能性や体験を重視する新しい観光へと関心が移っています。時代ごとの旅のあり方を理解することは、これからの観光を考える土台になります。

変化を読み解き、新しいおもてなしを発想できる人にとって、観光業はやりがいのある場であり続けるでしょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次