ホテル接客では、難しい敬語よりも、よく使う表現を正しく身につけて状況に応じて使うことが大切です。本記事では、基本の接客用語や敬語、クッション言葉、場面別フレーズ、避けたい言い回しをわかりやすく解説します。
関連記事:ホテル接客の仕事とは?仕事内容と向いている人の特徴
ホテル接客でまず覚えたい基本の接客用語
ホテルに限らず、接客業では頻繁に使われる基本的なフレーズがあります。
その代表例が、一般に「接客7大用語」と呼ばれる言葉です。ただし、7つの内容が業界全体で統一されているわけではなく、職場によって5大用語・8大用語などとして教えている場合もあります。
まずは、次のような表現を使えるようにしておくとよいでしょう。
| 接客用語 | 主に使う場面 |
|---|---|
| いらっしゃいませ | お客様を迎える |
| かしこまりました | 依頼や注文を受ける |
| 少々お待ちくださいませ | 確認などで待ってもらう |
| お待たせいたしました | 待ってもらった後 |
| 恐れ入ります | 依頼・質問・感謝など |
| 申し訳ございません | お詫びをする |
| ありがとうございます | 感謝を伝える |
大切なのは、言葉だけを暗記することではありません。
たとえば「少々お待ちくださいませ」と伝えたまま長時間待たせてしまえば、お客様は不安になります。時間がかかりそうなら「確認に5分ほどお時間をいただきます」など、見通しも一緒に伝えた方が親切です。
接客用語は、お客様とのコミュニケーションを円滑にするための道具として使いましょう。
ホテル接客で知っておきたい敬語の基本
ホテルでは、フロント、レストラン、ベル、予約受付など、さまざまな場面でお客様と会話します。
そのため、基本的な敬語の仕組みを理解しておくと役立ちます。
文化庁の「敬語の指針」では、敬語は「尊敬語」「謙譲語Ⅰ」「謙譲語Ⅱ(丁重語)」「丁寧語」「美化語」の5種類に分類されています。
ホテルで接客するときは、特に「誰の行動について話しているのか」を意識すると、敬語を選びやすくなります。
お客様の行動には尊敬語を使う
尊敬語は、お客様など相手側の行動や状態について述べるときに使います。
たとえば、
- 言う → おっしゃる
- 来る → いらっしゃる・お越しになる
- 見る → ご覧になる
- 食べる → 召し上がる
といった表現があります。
「お客様が言いました」ではなく、「お客様がおっしゃいました」と表現するのが一例です。
自分やホテル側の行動には謙譲語・丁重語を使う
自分やホテルスタッフ側の行動を表すときには、謙譲語や丁重語を使う場面があります。
たとえば、
- 聞く・訪ねる → 伺う
- 言う → 申し上げる・申す
- 持つ → お持ちする
- 案内する → ご案内する
などです。
たとえば、お客様の荷物を運ぶ際には「お荷物を持ちます」より、「お荷物をお持ちいたします」の方が接客では自然です。
ホテル業界の教育機関でも、宿泊接客ではこうした敬語を用いた応対例が紹介されています。
丁寧にしようとして敬語を重ねすぎない
敬語は、長くすれば丁寧になるわけではありません。
たとえば、
「お客様がおっしゃられました」
は、「おっしゃる」自体が尊敬語のため、さらに「られる」を重ねた二重敬語です。
「お客様がおっしゃいました」とすれば十分です。
同様に、
「ご利用になられる」
ではなく、
「ご利用になる」
などと表現できます。
文化庁も、一つの語について同じ種類の敬語を重ねる「二重敬語」は一般に適切ではないとしています。ただし、「お召し上がりになる」のように慣用として定着している表現もあります。
接客では「とにかく丁寧にしよう」と敬語を足していくのではなく、短くても自然で伝わりやすい表現を選ぶことが重要です。
ホテル接客で役立つクッション言葉
お客様に何かをお願いしたり、断ったりするときに役立つのが「クッション言葉」です。
依頼や断りの言葉をそのまま伝えると強く聞こえる場合でも、前にひと言加えることで表現をやわらげられます。
ホテル接客では、たとえば次のような言葉が使えます。
| クッション言葉 | 使用例 |
| 恐れ入りますが | 恐れ入りますが、こちらにご記入いただけますでしょうか |
| お手数をおかけしますが | お手数をおかけしますが、もう一度お名前をお願いいたします |
| 差し支えなければ | 差し支えなければ、ご連絡先をお伺いできますでしょうか |
| 申し訳ございませんが | 申し訳ございませんが、本日は満室でございます |
| あいにくですが | あいにくですが、こちらのレストランは本日の営業を終了しております |
「できません」「書いてください」「待ってください」と直接伝えるよりも、クッション言葉を加えることで、依頼や説明をやわらかく伝えやすくなります。
ただし、毎回長いクッション言葉を付ければよいわけではありません。急いでいるお客様に長い敬語を重ねると、かえって要点が伝わりにくくなることもあります。
相手の状況を見ながら、丁寧さと分かりやすさの両方を意識しましょう。
場面別|ホテルで使える接客フレーズ
ホテルでは、チェックイン、館内案内、電話対応、要望への対応など、似たやり取りが繰り返し発生します。
まずは、自分が担当する業務でよく使うフレーズから覚えるのが効率的です。
チェックインで使うフレーズ
お客様がフロントへ来たら、挨拶をしたうえで予約内容を確認します。
お客様を迎える
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました」
予約名を確認する
「ご予約のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」
記入をお願いする
「恐れ入りますが、こちらにご記入をお願いいたします」
確認のため待ってもらう
「ただいま予約内容を確認いたします。少々お待ちくださいませ」
ホテルによってチェックインの手順は異なるため、実際には勤務先のマニュアルに沿って対応します。
館内を案内するときのフレーズ
ホテルでは、レストラン、大浴場、エレベーター、喫煙所などの場所を聞かれることがあります。
「朝食会場は2階のレストランでございます」
「エレベーターは、こちらをまっすぐお進みいただいた右手にございます」
「大浴場は15時から翌朝10時までご利用いただけます」
案内するときは、丁寧な言葉を使うだけでなく、場所や時間を具体的に伝えることも大切です。
お客様を待たせるときのフレーズ
ホテルでは、予約内容の確認や他部署への問い合わせなど、その場ですぐ回答できないこともあります。
そのような場合は、
「確認いたしますので、少々お待ちくださいませ」
と伝えます。
時間がかかる場合には、
「確認に10分ほどお時間をいただく見込みでございます」
など、可能な範囲で目安を伝えると、お客様も待ち時間を判断しやすくなります。
対応が終わったら、
「お待たせいたしました」
と声をかけてから説明を始めましょう。
電話対応で使うフレーズ
電話では表情や身振りが見えないため、対面以上に言葉で状況を伝える必要があります。
電話を受ける
「お電話ありがとうございます。○○ホテル、フロントの△△でございます」
名前を聞く
「恐れ入りますが、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」
保留する
「確認いたしますので、少々お待ちいただけますでしょうか」
担当者が不在の場合
「申し訳ございません。ただいま担当の○○は席を外しております」
電話の受け方や名乗り方はホテルごとにルールが決められていることもあるため、勤務先のマニュアルを確認しましょう。
要望に応えられないときのフレーズ
接客で難しいのが、お客様の希望どおりに対応できない場面です。
たとえば、満室のため部屋を変更できない場合に、
「できません」
だけで終わらせると、突き放した印象を与えてしまうことがあります。
そのような場合には、
「申し訳ございません。本日は満室のため、お部屋の変更を承ることができません」
と、まず対応できない理由を説明します。
代替案がある場合には、
「明日でしたら別タイプのお部屋をご用意できます」
など、あわせて提案するとよいでしょう。
重要なのは、何でもお客様の要望を受け入れることではありません。ホテルのルールや安全上の理由などで対応できないことは、曖昧にせず説明する必要があります。
クレーム対応で使うフレーズ
クレームを受けたときは、内容を十分に確認する前からホテル側の過失を断定する必要はありません。
まず、
「ご不快な思いをされたとのこと、状況を確認させていただけますでしょうか」
「詳しくお聞かせいただけますでしょうか」
などと伝え、何が起きたのかを整理します。
確認に時間がかかる場合には、
「ただいま責任者に確認いたしますので、少々お時間をいただけますでしょうか」
と伝えます。
自分だけでは判断できない内容や、料金・事故・安全などに関わる問題は、勤務先のルールに従って責任者へ引き継ぐことが重要です。
チェックアウト・お見送りで使うフレーズ
チェックアウトは、お客様と接する最後の場面になることがあります。
「ご利用ありがとうございました」
「お気をつけてお帰りくださいませ」
「またのお越しをお待ちしております」
など、感謝とお見送りの言葉を伝えましょう。
ホテル接客で避けたい言葉遣い・NG表現
日常会話では問題なくても、ホテルの接客ではぶっきらぼうに聞こえたり、相手を否定しているように感じられたりする表現があります。
ただし、「この単語を口にしたら必ず失礼」というより、状況に合った言い換えを覚えておくことが大切です。
「分かりません」
質問に対して、
「分かりません」
だけで終わるのは避けた方がよいでしょう。
自分では回答できない場合も、
「確認いたしますので、少々お待ちくださいませ」
と伝えれば、次の対応につなげられます。
ホテルでは、自分が知らないことを推測で答えるより、分からないことは確認して正確に案内することの方が重要です。
「できません」
対応できないことを明確に伝えなければならない場面はあります。
問題なのは、「できません」とだけ伝えて会話を終わらせてしまうことです。
「申し訳ございませんが、当ホテルでは○○は承っておりません」
と理由を伝えたうえで、
「△△でしたらご案内できます」
と代替案があれば提案しましょう。
「忙しいので」
ホテル側が忙しいことは、お客様には直接関係ありません。
すぐ対応できない場合は、
「ただいま確認にお時間をいただいております」
「10分ほどお時間をいただけますでしょうか」
など、待ち時間や状況を具体的に説明します。
「お客様の勘違いです」
お客様の認識とホテル側の認識が異なる場合でも、最初から「勘違い」と決めつけるのは避けたいところです。
「恐れ入ります。こちらでも予約内容を確認いたします」
など、まず事実関係を確認しましょう。
確認した結果、案内内容と異なっている場合には、記録や規約などをもとに丁寧に説明します。
「了解です」
「了解」という言葉そのものが常に誤った日本語というわけではありません。
ただし、お客様への接客では、
「かしこまりました」
「承知いたしました」
などの方が、より丁寧な表現として使いやすいでしょう。
「すみません」
「すみません」は日常生活では幅広く使われる言葉ですが、接客では場面に応じて言い換えると意図が伝わりやすくなります。
お詫びなら、「申し訳ございません」
依頼や声かけなら、「恐れ入ります」
感謝なら、「ありがとうございます」
などと使い分けます。
「すみません」で済ませるのではなく、何を伝えたいのかに合わせて言葉を選びましょう。
接客用語は「丸暗記」より場面ごとに覚える
ホテルの接客用語を身につけようとして、敬語辞典を最初からすべて覚える必要はありません。
未経験からホテルで働くのであれば、まずは次の順番で覚えていくと整理しやすくなります。
- 「いらっしゃいませ」「かしこまりました」などの基本用語を覚える
- 自分の担当業務で頻繁に使うフレーズを覚える
- 勤務先の接客マニュアルを確認する
- 断る・待たせる・分からないときの言い換えを覚える
- 判断できないケースを誰に引き継ぐか確認する
特に重要なのは、対応に困ったときの動きを覚えておくことです。
ホテルでは、お客様から想定していなかった質問を受けたり、自分では判断できない要望を頼まれたりすることがあります。
すべての質問にその場で答えられる必要はありません。
「確認いたします」「責任者に確認してまいります」といった次の対応につなげる言葉を身につけておけば、分からない場面でも落ち着いて対応しやすくなります。
未経験なら言葉遣いだけでなく研修制度も確認しよう
接客用語や敬語は、働き始めてから身につけることもできます。
その一方で、新人への教育方法はホテルによって異なります。
接客マニュアルが用意されている職場もあれば、先輩と一緒に現場へ入りながら覚えていく職場もあります。
未経験からホテルへの転職を考えている場合は、求人情報を見るときに、
- 入社後研修はあるか
- 接客マニュアルは用意されているか
- どのくらいの期間、先輩がついてくれるか
- 独り立ちするまでの流れはどうなっているか
- クレームなど自分で判断できないケースの対応ルールはあるか
といった点も確認しておきましょう。
言葉遣いに自信がないからといって、それだけでホテルの仕事を諦める必要はありません。
接客用語は働きながら身につけられるスキルです。それよりも、自分が無理なく仕事を覚えられる教育体制があるかまで確認して職場を選ぶことが、長く働くうえでは重要になります。
関連記事:ホテルの研修制度には何がある?未経験・新卒・中途の研修内容と職場選びのポイント
基本の接客用語と「言い換え」を覚えておこう
ホテルの接客では、難しい敬語をたくさん知っていることよりも、相手に敬意を払いながら、必要な情報を分かりやすく伝えることが重要です。
まずは、
「いらっしゃいませ」
「かしこまりました」
「恐れ入ります」
「申し訳ございません」
「ありがとうございます」
といった基本的な接客用語から覚えていきましょう。
さらに、「分かりません」「できません」で会話を終わらせず、「確認いたします」「こちらでしたらご案内できます」と次の対応につなげる言い換えを身につけておくと、実際の接客で役立ちます。
ホテルによって接客ルールや求められる言葉遣いは異なるため、入社後は勤務先のマニュアルや研修に沿って覚えていくことも大切です。
ホテル接客の具体的な仕事内容や、向いている人・向いていない人について知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。

