「ホテルの調理師がきついのは皆がそう?」
「ホワイトとブラックの見分け方は?」
このような悩みを抱えていませんか?ホテルの厨房は一見華やかに見えても、過酷な長時間労働で休みが少ないなど、辞めたいと考える調理師も少なくありません。本記事では調理師が退職したくなるブラックな特徴をはじめ、続けたくなるホワイトな職場の特徴も紹介していきます。
後半では目標としたい年収や役職、現在のホテルを辞めて同業他社へ移る際のコツ、優良企業の見極め方法まで深堀りします。重要なポイントを押さえることで、調理師資格を活かしたキャリアアップにもつなげていけるので、ぜひ最後までご覧になってくださいね。
調理師が「辞めたい・やめとけ」と漏らすブラックなホテルの特徴
ホテルの調理師が「やめとけ」と周囲から忠告される理由には、主に6つの特徴があります。
- 長時間の拘束
- 見合っていない低賃金
- 有給休暇が取得できない
- 大量調理にともなう疲弊
- 上下関係とパワハラ
- 固定化メニューによる停滞
自身に何が当てはまっているかのチェックを行ない、深刻かそうでないかの判断材料としてみてください。
早朝から夜遅くまでの長い拘束
ホテル調理師が辞めたいと漏らす背景には、特有の過酷な労働環境が特徴的です。入社時には当然、勤務時間の把握のうえで籍を置いたことでしょう。しかし、求人データに掲載されていた勤務時間と乖離していたというのが、理想からかけ離れる苦境に追いやる原因です。
たとえば11時から20時までのはずが、10時から21時といった入社前とかけ離れた長い拘束時間です。またサービス残業があり、合わせると軽視できない時間になっていて疲弊していた場合が、周囲からやめとけと忠告される具体例となります。
資格者に見合わない低賃金
調理人を志したとき、調理師免許を取得するため時間を割いた人も少なくありません。また調理師専門学校の学費は学校によって差がありますが、1年制で120万〜200万円程度かかるケースがあります。もし専門学校に通ったうえでの費用の捻出があったなら、もったいなかったと後悔する調理人も当然いるわけです。
せっかくの国家資格を取得したにもかかわらず、見合わない低賃金だと辞めたいという後悔につながっているといえます。
有給休暇が取れない
調理師にかかる負担は、ホテルの人員をトータルで見ても大きいでしょう。フロント・客室係などのポジションには人員が間に合っていても、調理師の数にはゆとりがないケースが大半だからです。
問題なのは休みが取れず、実質的に有給休暇の申請ができない環境といえます。他の人は休みを問題なくとっていて、自身は有給が取れないとなれば辞めたくなるのも不思議ではありません。
年10日以上の有給休暇が付与される労働者には、会社側が年5日を取得させる義務があります。それにもかかわらず取得しづらい雰囲気がある、申請しても認められにくい職場は注意が必要です。
宴会需要の大量調理にともなう肉体疲労
ホテルの調理師は小規模のレストランとは比較にならないほど、大量の調理を行なうことも珍しくありません。疲弊してしまう具体的なシチュエーションには、以下の事例があります。
CASE
- 団体立食パーティー
- 週末の婚礼
- 企業の宴会
肉体疲労の理由
- 数十キロ単位の食材を抱える
- 15キロを超える重量級の寸胴鍋を扱う
- 真夏にともなう体力の消耗
もし体力の消耗を想定していない・鍛えられていないのなら、重量物の扱いには悪戦苦闘してしまうでしょう。
縦社会が生む上下関係のきつさやパワハラ
厨房によっては、上下関係が厳しい職場もあります。料理長や先輩の指示が強く重視されるためです。
人格を否定する発言には注意が必要です。人前で怒鳴る行為や執拗な叱責も同様です。状況によっては、パワハラに該当します。
管理職に権限が集中する職場もあります。相談窓口が機能していない場合もあります。
こうした職場では、若手が意見を伝えにくくなります。精神的に孤立するおそれもあります。
ただし、職場環境や指導方法は施設ごとに異なります。すべての厨房に共通する特徴ではありません。
パワハラは、心身の不調につながるおそれがあります。不調が長引くこともあるため、注意が必要です。
固定メニューによる調理スキルの停滞
ホテルによってはメニューが固定化しており、年間を通しても変わらないこともあります。しかし、定番メニューの提供を続けたり料理の品質を均一に保つためだったりする一方で、ルールを重んじる日本の慣習は成長を止めることも珍しくありません。
メニューの研究・開発に携われず、自身のアイデアを活かす機会も与えられなければ調理スキルが停滞してしまうでしょう。よって「現状のままでは調理技術が身につかない」といった、周囲が気づきにくい「なぜあの人が退職を?」という事態も生んでしまうわけです。
ホテル調理師が在籍を続けるホワイトな企業
過酷なイメージが強いと再認識したら、次に「ホワイト企業だとどうか?」という現状も把握しておく必要があります。
- 労務管理が徹底された勤務時間の遵守
- 年間休日110日以上の公休
- 一流へのステップアップを計画できる体制
- 業績や貢献度が還元される評価制度
1つずつ補足をしていくので、今後の活動の参考にしておきましょう。
労務管理が徹底された勤務時間の遵守
ホワイト企業のホテルでは、タイムカードの改ざんやサービス残業は容赦されません。たとえば、デジタル勤怠システムを導入している企業もあります。
それぞれのメリット
- 【経営陣】超過が起きていないかの把握ができる
- 【調理師】時間外労働があっても分単位で給与反映
双方に利点があることが導入されている理由で、調理師は労務管理によって安心できます。とくに近年ではコンプライアンス基準が重んじられるため、労務についてもチェックしておく必要があるでしょう。
過重労働を防ぐ取り組みがある
人手不足で休日を削ることがないよう、シフト管理と人員に余裕を持たせているのもホワイト企業の強みです。また「平成26年の経済センサス(総務省・経済産業省)」に基づき、東京商工リサーチが抽出した調査結果では、過重労働防止についての注目が欠かせません。
過重労働防止に向けて実施している取り組みの一例
- 週1以上の定休日を設けている
- 休日の振替または代休を付与
- 時間外労働時間や年次有給休暇の見える化
上記のような取り組みを実施している企業は、調理師にとって、ホワイト企業かどうかを見極める基準にできるでしょう。なお、楽な仕事にフォーカスして探す人もいますが、過重労働防止に重きを置く企業だと過酷と正反対の環境が期待できます。
一流へのステップアップを計画できる体制
ハイクラスなホテルでは、一流の料理人として育成するためのカリキュラムを設けることがあります。和洋折衷の垣根を超えた高度な技術を学べる、著名なシェフを招いた講習会に参加できるなど、スキルの研鑽や知的好奇心も満たすことができるでしょう。
またホワイト企業は近年の人手不足を背景に、若手を単純な労働力として使い潰さない骨太な理念を大切にしています。
業績や貢献度が還元される評価制度
世渡り上手だけが出世するといった、不透明性を排除するのがホワイト企業の強みです。例として厨房の専門チーム(セクション)ごとに評価基準が設けられています。そこで、以下の例で、評価の仕組みも見てみましょう。
| 評価項目 | 評価される基準 |
| 仕入・原価管理 | ・過剰発注による廃棄を出していない・原価率の優れたコントロール |
| 衛生・在庫管理 | ・食材の温度管理や賞味期限の管理・厨房内の清掃チェック表の運用 |
| 人材育成・教育 | ・技術、レシピのマニュアル化・後輩社員の定着率が高い |
上記の目標達成によって賞与やベースアップ、その他手当てに直結させ、モチベーションを高めてくれる企業が狙い目です。
【役職ごとに激変】ホテル調理師の年収目安
調理師を辞めたいと思う理由として、人間関係や労働環境を除くと、給料が挙げられるでしょう。ここでは、一般・役職者・総料理長の年収目安と、条件にも触れていきます。
一般職【平均】
一般的な調理師の平均年収は、約379.1万円(令和7年)というデータが確認できました。もしこちらより低いラインなら、新卒入社やまだ経験が浅い状態だといえます。
調理師資格は、ホテル厨房での採用や昇進で有利に働くことがあります。ただし、調理業務そのものに必ず必要な資格ではないため、経験・技術・衛生管理への理解もあわせて評価されます。
出典:厚生労働省編職業分類の「西洋料理調理人」等に対応する統計情報
大きく飛躍できる役職者
調理師経験を積んでいき、役職者に昇進すると年収500万円以上を見込むことができます。
年収モデル例
副料理長(スーシェフ):約500~600万円
料理長(シェフ):約600~800万円
魅力的な年収ラインとなりますが、知識と経験のいずれも求められます。たとえば調理経験は数年以上や、衛生管理のほかに労働安全基準にまつわる高度な知識などでしょうか。
しかし調理専門学校出身で資格を得るために学んだ履歴があるなら、将来のビジョンを見据えていたはずです。長期にわたるスキルアップ計画を立て、高く評価されるレベルを目標にしましょう。
最終目標にしたい【総料理長】
ホテルの調理師で、もっとも年収が高いのが総料理長(エグゼクティブシェフ)の役職です。外資系ホテルやミシュラン星付きがメインフィールドで、年収は1,000万円を超えることもあります。
求められる条件の一例
- 料理長や総料理長の経験
- 新規店舗の立ち上げ経験
- 高単価のレストランでの経験
- ホテルのフレンチレストランの経験
- チームとの連携、オペレーション力
ホテル調理人を辞める・辞めた後の注意点
いまのホテルの厨房を去る決心をしたあとは、退職の進め方をはじめとして細心の注意を払う必要があります。
- 禍根を残す退職は厳禁
- 円満な退職方法
- 辞めた後の非推奨の探し方
これら3点の注意点をピックアップするので、参考にしてみましょう。
禍根を残す退職は絶対に厳禁
ホテルの料理人の世界は意外と狭く、横のつながりが強い性質を持ちます。ブラックだったとしても、揉めごとを起こすトラブルメーカーになってはいけません。以下のような辞め方をしてしまうと、悪評が広まる可能性もあります。
避けるべき辞め方の例
- 報復的、やる気の消失から無断欠勤をする
- 直属の上司を飛び越え、さらに上層部や総支配人へ直訴
- 現在勤めているホテルの不満をSNS等にぶちまけてしまう
このような辞め方は想定以上の禍根となって、最悪のケースだと次のホテルの入社前後に問題となることがあります。内定取り消しやマイナス評価から始まるなど、後悔を生まないためくれぐれも注意しておきましょう。
丁寧な退職交渉と実務の引き継ぎ
穏便に退職を進めていくための心構えを把握したら、丁寧な交渉と引き継ぎのコツも理解しておきましょう。退職希望日の1ヶ月前、できれば3ヶ月前までに伝えるのが望ましいです。まずは相談の形で意思を上司・料理長へ伝えます。
告げる際のおすすめ表現
- 別の専門料理を深く学びたい
- さらなる飛躍のための決断
- 異なる職種で叶えたい夢を発見した
上記のような表現だと波風も立たないため、理解ある上司なら快く承諾してくれるでしょう。
辞めた後の推奨できない探し方
もし調理人の職を変えることなく違う職場を探すなら、求人検索に使う媒体も慎重に選ばなくてはなりません。推奨できないのは、ハローワークの求人票を見ての応募、紙媒体・一般求人情報サイトで転職先を決める即断です。
なぜなら求人概要の詳細が記載されていないこともあり、例えばホテル就職・転職などの専門サイトと比べると情報量が違うからです。専門のエージェントであれば、相談・二人三脚のアドバイスなど、戦略的に理想的な転職を実現できます。
優良企業を見極め入社する戦略【面接対策】
辞めたいことが頭をよぎっていても、調理師を続けたい意思があるなら面接対策もしておきましょう。ここでは、福利厚生・見学や説明会への参加・キャリアアップ関連質問についてピックアップします。
面接で労働環境や福利厚生の実態を確認する方法
優良企業へ入社するためには、面接の際に実態の確認が欠かせません。直球で「残業は多いですか」と聞くとやる気を疑われる可能性があるため、質問の時間を活用してみましょう。
面接時のおすすめしたい質問の例
- 残業+休日:「繁忙期と通常時の、厨房スタッフの平均的な退勤時間を教えていただけますか」
- 福利厚生:「求人票に記載されていない福利厚生について、他にはどのようなものがありますか?」
聞き出すポイントは掲載されていない情報のメモを取るなど、予行練習を兼ねて面接に挑むことです。
厨房見学や合同説明会への積極的な参加【調理師・パティシエ】
厨房の見学については、格式高いホテルが開催していることもあります。専門学校の一例では、帝国ホテル(※)における厨房見学のピックアップも見られました。また新卒向けには外資系ホテルを会場とした、合同会社説明会の開催も主要都市で見られるためチェックが欠かせません。
調理職に限定した大型イベントだと、出展企業数は数十社にのぼるなど、価値が高い内容といえるでしょう。対象は調理師や女性にも人気のパティシエです。さらにデジタルの真価を活かした、オンライン職場見学ができるケースもあり、効率性も十分です。
出典(※):辻調理師専門学校(帝国ホテルでプロの味と伝統に触れる一日!より)
キャリアアップ環境があるかの確かめ方
年間を通じて変わらないルーティンワークは、年収アップの機会を損失させるため探りを入れる必要があります。肝心なのはどのようなステップを経てキャリアアップができるか、メニュー開発にも携われるかなどの具体的な質問をすることです。
| ホワイト企業の回答 | ・入社後、昇格までにかかる年数の具体的な説明がある・給与アップの具体的な数字の提示がある・福利厚生の充実度を口頭やパンフレットで提示・開発に関与できる具体性を説明してくれる |
| ブラック企業の回答 | ・抽象的で回答になっていない・ベースアップは業績次第といった曖昧な回答 |
合わせてホームページで求人にかかる募集要項を見て、不明な点を面接で聞くよう準備万端にしておきましょう。
環境がきついだけなら調理師を辞めない選択もあり
ホテルの労働環境がきついと、調理師自体を辞めたくなる背景がありました。また劣悪な企業だと中身が不透明で、待遇が悪いケースもあるため注意が必要です。
ただ評価基準が明確な優良企業を見極められれば、役職者へのステップアップで高年収を目指せるのもホテル調理師の大きなメリットです。スキルの研鑽と柔軟な思考など、戦略を立てたビジョン設計によって「あのとき辞めなくてよかった」と思える成功をつかみ取りましょう。

