ターンダウンサービスは、主に夕方から夜にかけて、宿泊客の就寝に向けて客室を整えるサービスです。宿泊客が外出中に行われることが多いものの、在室時には希望を確認して対応します。
ベッドがきれいになっているほか、照明が暗めに設定されるなど、内容はさまざま。小さな心遣いによる演出が、ターンダウンサービスの真髄です。
この記事ではホテルスタッフとして知っておきたい、ターンダウンサービスの意味や客室清掃との違いについて解説します。
ホテルのターンダウンサービスとは
ターンダウンサービスはホテルの宿泊客が外出中に客室スタッフが部屋を訪問して、就寝に向けた環境へと整えるサービスを指します。
ただ客室が清潔になるよう清掃・整頓するだけでなく「今夜の宿泊のため」のおもてなし精神に基づいて行われるのが、サービスの特徴です。
まずは、ホテルにおけるターンダウンサービスの主な内容や誕生した背景について見ていきましょう。
- 主なサービス内容はベッドや室内の調整
- 誕生のきっかけは西洋文化
- お客様の満足度向上を目指せるのが魅力
- 多くのホテルでは18〜20時ごろに実施
- 高級ホテルや外資系ホテルで広く導入
主なサービス内容はベッドや室内の調整
ホテルのターンダウンサービスは以下のように、ベッドを整えたり室内をリラックスできる環境に整えたりするのが、主な対応内容です。
- ベッドカバーを取り除く
- すぐに眠れる状態にするためシーツを整える
- 入眠に向けて照明を暗めに調整する
- 使用済みタオルを交換する
- ミニバーを補充する
対応内容はホテルによってさまざまですが、お客様にゆっくりホテルで休んでもらいたいおもてなし精神に基づいている点は共通しています。
誕生のきっかけは西洋文化
ターンダウンサービスは、欧米のホテル文化の中で広まったサービスとされています。名称は、就寝前にベッドカバーやシーツを折り返し、ベッドを使いやすい状態に整える動作に由来すると説明されることがあります。
西洋圏では靴を履いたまま室内を歩く習慣があり、ベッドには靴で寝具を汚さないよう「ベッドスロー」をシーツに掛けるのが一般的です。
ホテルでもベッドスローを設置し、就寝前にスタッフが片付ける習慣が定着しており、その対応に付随してターンダウンサービスが生まれました。
やがてベッドスローの回収とともに、照明を調整したり夕食後のチョコレートを提供したりするホテルも登場し、業界全体へサービスが広まったのです。
お客様の満足度向上を目指せるのが魅力
誕生したきっかけこそ西洋の住文化ですが、ターンダウンサービスはお客様の満足度向上をはじめ、以下のようにさまざまな魅力があります。
- 細やかな配慮によりお客様の満足度向上を目指せる
- お客様のリピート率向上へとつなげられる
- ホテルのブランド価値向上を目指せる
- お客様満足度の高さからスタッフの意欲にもつながる
ちょっとした心遣いであっても、お客様に「大切にされている」と感じてもらえる体験を提供するのが、ターンダウンサービスの目的です。
お客様の満足感がリピート率やスタッフの意欲にもつながっていくなど、ターンダウンはホテル運営の質をさらに高めるきっかけにもなりうるでしょう。
多くのホテルでは18〜20時ごろに実施
多くのホテルでは、宿泊客が夕食や観光のために外出している18〜20時ごろを目安に、ターンダウンサービスを実施しています。
実際のタイミングはホテルの立地やお客様の滞在目的などにより変わり、フロントや予約状況と連携して実施するのが一般的です。
またホテルはプライベート空間が重視される傾向にあり、滞在中のスタッフ入室を敬遠するお客様のため、サービスを希望制にするホテルもあります。
希望制を採用するホテルでは、ターンダウンサービスが必要かをドアノブにカードを掛けて意思表示できるなど、対応はさまざまです。
高級ホテルや外資系ホテルで広く導入
ターンダウンサービスは以下のように、ラグジュアリーホテルや外資系を含む高級ホテル、または上位客室向けのサービスとして提供されることが多いです。
- 高級ホテルやラグジュアリーホテル
- 外資系の都市型ホテル
- リゾートホテル
日本国内では高級ホテルや上位客室のサービスとして用意されており、すべての宿泊施設で一般的に行われるサービスではありません。
ただし、ベッドがない旅館などでは仲居が夕食後に布団を敷くなど、近しいサービスは日本国内でも広く根付いています。
その点から見ても、ターンダウンサービスは文化圏を超えて「おもてなしの形」として広く存在するのがわかるサービスです。
ターンダウンサービスと客室清掃の違い
ターンダウンサービスについてさらに深く知るため、一般的な客室清掃との違いも整理しておきましょう。
| 種類 | 目的 | タイミング | 対象の客室 | 主な内容 |
| ターンダウンサービス | 就寝前の空間演出 | 夕方〜夜 | お客様が滞在中の部屋 | ベッドの調整や空間演出・アメニティの補充など |
| 客室清掃(ハウスキーピング) | 次のお客様を迎えるための整頓 | 午前(チェックアウト後) | チェックアウト済みの客室 | 全室清掃や備品交換・消毒 |
| ベッドメイキング | 清潔なベッド環境の整備 | 日中(チェックアウト後) | チェックアウト済みの客室 | シーツ交換やベッド周りの整頓 |
| インスペクション | 客室清掃後の点検 | 日中(チェックアウト後) | チェックアウト済みの客室 | 客室の不備や汚れ・清掃漏れがないかの点検 |
ターンダウンサービスと客室清掃に関連するほかの対応との違いについて、さらに詳しく解説します。
朝の客室清掃(ハウスキーピング)との違い
客室清掃は、チェックアウト後の客室を次の宿泊客に向けて整える清掃や、連泊中の客室を清潔に保つ清掃を含む業務です。
以下のようにお客様の宿泊前の状態に部屋を戻すのが目的で、幅広い作業が必要です。
- ゴミの回収
- 床や水まわりの清掃
- リネン類やタオルの交換
- 客室の消毒
- 備品・アメニティの補充
客室全体を隅々まで整えるのが目的で、作業範囲も時間もターンダウンサービスよりも広く深い対応が求められます。
一方、ターンダウンサービスは、その中でも夕方から夜にかけて就寝前の快適さを整えるサービスです。
念入りな清掃はハウスキーピングの方が重視されますが、ターンダウンはリラックスできる空間演出が求められるでしょう。
ベッドメイキング(スプレッド・デュべ)との違い
ベッドメイキングは、シーツや枕カバーを整え、ベッドを清潔で使いやすい状態にする作業です。チェックアウト後の清掃だけでなく、連泊中の客室清掃(ハウスキーピング)でも行われます。
主に清潔さと機能性の維持が重視され、いわば客室のベッドを「使える状態にする」のが目的です。
なおベッドメイクには主に2つの手法があり、ホテルにより採用される手法や方針は変わります。
| 手法 | 主な特徴 |
| スプレッド | マットレスと掛け布団の間にシーツを敷くスタイル |
| デュべ | 布団を袋状のシーツで包むスタイル |
日本の生活様式ではデュべが多いですが、外資系ホテルや海外ホテルではスプレッドを採用するところも多く存在します。
対してターンダウンは、清潔さを維持しつつ「今夜その部屋で眠るお客様のため」の環境づくりを目的としたサービスです。
必ずしもリネン類をすべて取り替える必要はなく、シーツの角を折り込むなど、眠りの質を高める演出が大きな違いだといえます。
インスペクションとの違い
インスペクションは直訳すると「調査・検査」で、ホテル業界では清掃済みの客室を点検し、設備の不備や清掃漏れがないか確認する作業を指します。
清掃後の客室に汚れがないか、次に利用するお客様が気持ちよく使える状態であるかを、スタッフの目で確認する対応です。
インスペクションは多くのホテルでは清掃を担当したスタッフ以外の責任者や専門スタッフが対応し、不備がないか念入りに行われます。
なおインスペクションは多くのホテルで実施されますが、ターンダウンは高級ホテルをはじめ一部の施設に限られる点が特徴です。
ホテルによって実施の有無や対応内容は変わるため、ホテル業界で働くときは実施の有無や対応内容もよく確認する必要があります。
ターンダウンサービスの主な作業内容
ターンダウンサービスではお客様が就寝前に心地よい時間を過ごせるよう、さまざまな作業が行われます。
ここではターンダウンのためホテルスタッフが行う主な対応を、6つのポイントでご覧ください。
- ベッドを就寝しやすく整える
- 枕やマットレスの固さを調整する
- 照明や香り・カーテンを入眠しやすい環境へ整える
- アメニティやミニバーを補充・清掃する
- メッセージカードやチョコレートを置く
- 客室全体に問題がないかチェックする
ベッドを就寝しやすく整える
ターンダウンサービスの核となる作業がベッドのセッティングで、主に以下の作業が行われます。
- ベッドスローの片付け
- ベッドカバーや羽毛布団の折り込み
- ベッドサイドへのスリッパの設置
- パジャマの設置
ベッド周辺を片付けたり、シーツや羽毛布団をきれいにめくったりと、お客様がすぐに眠れる状態へ整えるのが基本の流れです。
細やかな準備により、お客様が手間なくすぐに疲れを癒せるよう整えるのが、ターンダウンにおける主な対応だといえます。
枕やマットレスの固さを調整する
お客様にゆっくりと睡眠を取ってもらうため、枕やマットレスをお客様好みのものに変えるのも、サービスの一環です。
固さや形状に応じて複数種類の枕やマットレスを用意して、お客様自身で自分に合ったものを選べるよう対応するのが特徴。ターンダウンにあたってメッセージカードとともに寝具メニューを用意し、お客様が客室へ戻ったときに選べるよう準備するホテルもあります。
照明や香り・カーテンを入眠しやすい環境へ整える
入眠しやすい雰囲気づくりには、照明や香り・カーテンの調整も大切です。
明るい朝昼用の照明から温かみのあるオレンジ灯に切り替えたり、アロマを使用してリラックスできる空間を演出したりと、入眠に向けたムードを演出します。
また、カーテンはしっかりと閉めて外からの光が入らない状態に整えるのも、対応内容のひとつ。ホテルによっては遮光カーテンのほかレースカーテンの開き具合にも気を配るなど、客室の設備に合わせた調整により、落ち着きを生み出しています。
アメニティやミニバーを補充・清掃する
使用済みタオルの交換、アメニティの補充、ミニバーや飲料類の確認を行う場合もあります。
| 場所 | 主な対応内容 | 主な目的・目標 |
| 洗面室・浴室 | タオルやバスアメニティが使われていれば補充する洗面台まわりの散らかりを軽く整える | 水まわりを清潔感のある状態へと戻す |
| 客室・ミニバー | ゴミ箱の中のゴミを取り除くテーブル周りの散らかりを軽く整える使用された飲料や菓子類を補充する | 翌朝まで清潔かつ補充の必要がない状態へと戻す |
ただしいずれのエリアもお客様の私物には絶対触れず、整頓と干渉のバランスを意識しながら作業する意識が求められます。
メッセージカードやチョコレートを置く
ターンダウンでは、お客様が客室でくつろげるよう、チョコレートやミントなどの小菓子、メッセージカードを置くことがあります。こうした小さな演出は、高級ホテルのおもてなしの一例です。
メッセージカードには、お休みのあいさつや翌日の天気、おすすめの朝食情報など、お客様への心遣いを伝える内容が添えられます。
こうした小さな演出の積み重ねもお客様の満足感やリピーターの獲得につながるよう、意識して実施するのが大切です。
客室全体に問題がないかチェックする
ターンダウンサービスの最後に必ず行うのが、客室全体の最終確認です。
サービスを実施するにあたって客室に不備はないか、やり忘れている対応はないか、以下のように確認します。
- 照明のつけ忘れはないか
- 備品の確認漏れ・補充漏れはないか
- エアコンの設定温度や動作に問題はないか
- テレビのリモコンなどが正しい位置に置かれているか
- 水まわりや客室設備に破損や目立つ汚れはないか
ターンダウンサービスでは、就寝前の準備に加えて、客室設備や備品に不備がないかを確認することもあります。
問題を早期に発見して対処するのも、ホテル全体のサービス品質の維持につながるでしょう。
ホテルスタッフにターンダウンサービスで求められる心構え
ターンダウンサービスを高いレベルで実施するには、ただ決められた作業をこなすだけでは足りません。サービスに取り組む姿勢や、ターンダウンで求められる考え方を身につける必要があります。
ここではホテルスタッフがターンダウンサービスにおいて特に意識したい、3つの心構えを見ていきましょう。
- 清掃ではなく演出が目的である意識を持つ
- 短時間で上質な空間へ整えられるよう段取りを組む
- お客様のプライバシーに配慮する
清掃ではなく演出が目的である意識を持つ
ターンダウンサービスは単なる客室清掃ではなく、お客様が眠るにあたって心地よい空間を演出するのが目的です。
清掃だと考えて取り組むとゴミを取ったりタオルを交換するなど、機能的な作業にとどまりがち。しかし演出の視点を持てば、チョコレートやメッセージカードを置く位置や照明のトーンにも気を配れるでしょう。
お客様が客室の扉を開けたときの「第一印象」を大切にする意識が求められます。
「お客様が部屋に戻ったときにどう感じてほしいか」を常に意識して動くのが、ターンダウンサービスの質を高めるうえでの基本の心構えです。
短時間で上質な空間へ整えられるよう段取りを組む
ターンダウンサービスはお客様が不在の限られた時間内に済ませる必要があります。
短時間で最大限のサービスを実施するためにできる準備の例として、以下をご覧ください。
- 作業の順序を体に染み込ませる
- 入室前に必要な備品や演出アイテムを不足のないよう揃える
- 客室内での作業導線が最短になるよう意識する
- 複数の客室を担当するときはお客様の状況を把握して優先順位を決める
作業スピードを上げた結果、対応が雑になっては本末転倒です。速さと丁寧さを両立させる段取り力こそが、現場で信頼されるホテルスタッフに求められる技量だといえます。
お客様のプライバシーに配慮する
ターンダウンサービスはお客様が使用中の客室にスタッフが入室するサービスのため、プライバシーへの配慮は欠かせません。そこでお客様のプライバシーを守り安心してホテルを利用いただけるよう、以下の対応を意識しましょう。
- 入室前に必ずノックと声掛けをして不在を確認する
- お客様の私物には絶対に触れない
- 散らかっていても私物であれば不用意に動かさない
- 見てしまった個人情報や持ち物は他言しない
万が一お客様が在室していたときにも落ち着いて対応できるよう、状況に応じた声かけを用意しておくのも大切です。
配慮が行き届いたターンダウンサービスはお客様の安心感につながり、ホテル全体への信頼を築くことにもつながります。
そのためにはホテルスタッフとしてのおもてなしの感性や段取り力といった、総合的なスキルを育てる必要がある点も、知っておきましょう。

