ホテルを中心とする接客業は、働く人に多くのストレスが溜まりやすい業種です。こうしたなかで心身を疲弊させることなく接客の仕事を続けるためには、主なストレス要因を理解したうえでできる限りの対策を講じることが大切になります。
そこでこの記事では、最初にホテルや飲食などの接客業において、ストレスが溜まりやすいとされる主な要因を解説します。そのうえで、ストレスを溜めやすい人の特徴、仕事とプライベートで実践できるストレス対策・解消方法を紹介しましょう。
接客業でストレスが溜まりやすい主な原因とは?
以下のような接客業には、働く人にストレスをもたらす問題が生じやすい特徴があります。
- 宿泊施設(ホテル・旅館)
- 飲食店(レストラン・ファーストフード・カフェ など)
- スーパー
- ショッピングモール
- デパート
- アパレルショップ
- 携帯電話ショップ
- コールセンター
- ブライダル など
これから初めて接客業の仕事に就く場合、ストレスが溜まりやすい主な要因を知っておくことも大切です。また、どういった場面や問題からストレス過多になるのかを理解することで、早期の対策を講じやすくなるでしょう。
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理不尽なカスハラやクレームが多い
理不尽なカスハラ(カスタマーハラスメント)やクレームは、接客業における最大のストレス要因の一つといっても過言ではありません。カスハラとクレームには、以下の違いがあります。
- 【カスハラ(カスタマーハラスメント)】顧客からの不当な要求や嫌がらせ行為の総称。
- 【クレーム】顧客からの改善提案を含む要求の総称。正当なものは企業成長に役立つ。
この業界にカスハラ・クレームが起こりやすい理由には、来店客のなかに「お客様は神様である」と誤解している人が多い背景が関係しています。
自分を「お客様は神様である」と思っている人がお店や施設内で不快感を覚えた場合、スタッフに暴言や長時間の説教、理不尽な要求をすることもあるでしょう。
理不尽な理由から大勢のお客様などの前で謝罪や土下座を求められる状況は、スタッフに精神的ダメージをもたらします。また、大声を出されたりした場合、許容できるストレスのレベルを遥かに越えて、トラウマとして心に深い傷を残すこともあるかもしれません。
また、自分がミスや失礼な態度をとらなくても、カスハラが起こり得る環境は、多くのスタッフに精神的プレッシャーをもたらすでしょう。
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感情労働である
接客業の仕事では、以下のように感情のコントロールを求められることが多いです。
- 笑顔で常にポジティブな感情を表現する
- 苛立ちや不安などのネガティブな感情を抑える
上記を実現するためには、働く人が他者のために自らの感情を管理・コントロールし、うまく活用する必要があります。これらは、感情の自然かつ正常なメカニズムとは大きく異なる可能性が高いでしょう。
特に先述のカスハラの場面では、多くのスタッフの心に「怖い」や「嫌だ」などのネガティブな感情が起こりやすくなるはずです。そこでネガティブ感情を抑えて毅然とした対応を行うことは、スタッフの心に負担をもたらす可能性が高いでしょう。
人間関係の問題が仕事に影響しやすい
ホテルフロントや飲食などの接客業では、チームワークが求められることが多いです。そこで、上司・同僚との相性が悪かったり、仕事に対する価値観が合わなかったりすると、仕事を効率よく進められなくなり、ストレス要因が増えるかもしれません。
また、人間関係が悪いなかで先述の理不尽なカスハラなどが生じた場合、上司や先輩からのフォローを受けられず、迅速かつ適切な対処ができない可能性もあるでしょう。
社内でのパワハラ(パワーハラスメント)やセクハラ(セクシュアルハラスメント)も、大きなストレス要因になり得ます。
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生活が不規則になりやすい
接客業の場合、早番・遅番などのシフト勤務が多いです。そこでたとえば、遅番の翌朝が早番だったりする場合、「9時から18時」などの毎日同じ時間帯に出勤する業種と比べて生活が不規則になり、心身をゆっくり休めることが難しくなるかもしれません。
また接客業では、土日祝日に勤務が発生しやすい職場も多く、世間が大型連休に入る年末年始やゴールデンウィークなどが繁忙期になることが多いです。そこで家族や仲の良い友人が土日祝日休みの仕事をしていると、予定を合わせづらいことで孤独感やストレスが溜まりやすくなるでしょう。
体力的負担が大きい職種が多い
まず接客業には、以下のような立ち仕事の業種が多いです。
- 【ホテル】のフロント・コンシェルジュ・ハウスキーパー(客室清掃員)・ベルスタッフ・ドアマン など
- 【レストラン】のホール・キッチン・バーテンダー など
- 【小売店】レジ・品出し・サービスカウンター など
さらには、たとえばホテルのドアマンやベルスタッフの場合、お客様の大事な荷物を預かって運搬するため、かなりの体力を使います。それが土日祝日や大型連休などの繁忙期となれば、身体への負担が大きくなりやすいでしょう。
立ち仕事や重い荷物を運んだ経験が少ない場合、体力的負担から精神的なストレスにつながる可能性もあります。
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人手不足の職場が多い
職場の人手不足は、シフト間インターバルの短さ、人材育成の停滞、長時間労働といったストレス要因につながります。
なお接客業には、さまざまな要因から人手不足に直面している企業が多いです。国土交通省・観光庁の調査によると、宿泊業では、時期にかかわらず常に人手不足となっている施設が約2割あるとされています。
出典:宿泊業の人材確保・育成の状況に関する実態調査 概要(国土交通省 観光庁)
接客業でストレスを抱えやすい人に特徴はある?
接客業のスタッフは、全員が同じだけのストレスを抱えているわけではありません。特に強いストレスを抱えがちな人には、いくつかの共通点があります。主な特徴を見ていきましょう。
感受性が豊か・繊細である
感受性が豊かであると、お客様や上司・同僚のネガティブな感情をダイレクトに感じ取ってしまいます。結果として、自分事のように傷つくことになるでしょう。
また、感受性が強く繊細な人は、自分が所属する部署やチーム内のピリピリとした空気も察知しやすいです。そのため、職場内に人間関係や業務上のトラブルが多い場合、自分に直接的な原因がないにもかかわらず、気疲れしやすくなります。
作り笑顔が苦手である
接客業では、仕事やプライベートでどんなにつらいことがあっても、お客様のために「おもてなしの笑顔」を作らなければなりません。
しかしそこで、自分の気持ちと表情を切り離すことが苦手である場合、お客様の前で笑顔をつくればつくるほど、自分の心がすり減っていくでしょう。
自分の正しさや納得感を重視する
接客業の現場では、お客様からの理不尽なカスハラやクレームに対して、スタッフ側が折れて謝罪をしたり、場の空気をおさめたりする場面が多くあります。
こうしたなかで、たとえば「自分に問題があった場合のみ素直に謝罪する」や「具体的に何が問題なのかを教えてもらいたい」といった納得感を重視する人は、接客業ならではの理不尽さに耐え難いストレスを感じるはずです。
また「自分は正しい、間違っていない」という信念を強く持ちすぎると、他のメンバーの言動が許せないことでもストレスが溜まりやすくなるでしょう。
人に頼るのが苦手である
接客業では、自部門内はもちろんのこと、たとえば「ホテルのフロントとベルスタッフ」や「レストランのキッチンとホール」というように、部門横断的に連携や協力をし合うことが多いです。
そこで、他人にお願い事ができず自分ひとりでなんでも解決しようとするタイプだと、仕事の抱えすぎで心身がパンクしやすくなるでしょう。
また、こうした性格からいわゆる報連相が遅れた場合、大きなトラブルの発生により厳しい叱責を受けたり、その対応に追われたりと、結果として、ストレス要因が増えやすくなるかもしれません。
気持ちの切り替えが苦手である
気持ちの切り替えが苦手だと、理不尽なカスハラやクレーム、仕事の失敗といった「嫌なこと」を引きずってしまい、休日も心身を休めることができません。
また、お客様や上司などから理不尽な叱責を受けたことにいつまでもとらわれていると、さらなる仕事の失敗や接客品質の低下につながりやすくなるでしょう。
こうした悪循環に陥った場合、ストレス要因がどんどん増える可能性があります。
まわりに接客業の友人知人が少ない
接客業の家族や友人知人がまわりにいない場合、以下のストレス要因に直面しやすくなります。
- 休みが合わず、一緒に遊ぶことができない
- 接客業ならではの苦悩について、共有・相談できる人がいない
上記に共通するのは「孤独」です。また相手が恋人の場合、まとまった時間を一緒に過ごすことが難しかったり、日々の疲労から会う時間をつくることが億劫になったりして、結果的に別れなどの関係悪化につながる可能性もあるでしょう。
接客業のストレスは「続ける・相談する・環境を変える」で考えよう
接客業でストレスを感じているからといって、すぐに辞める必要があるとは限りません。
一時的な疲れであれば、休息を取ったり、仕事との向き合い方を変えたりすることで楽になることもあります。一方、人手不足やカスタマーハラスメントへの対応不足など、自分ひとりでは解決しにくい問題が原因になっている場合は、職場へ相談したり、転職を検討したりしたほうがよいケースもあるでしょう。
大切なのは、「自分が我慢すれば何とかなる」と考えるのではなく、ストレスの原因と程度に応じて対応を変えることです。
目安として、次のように考えてみましょう。
| 状況 | 対応の目安 |
|---|---|
| 繁忙期など、一時的に仕事が忙しい | まずは休息を取りながら様子を見る |
| 特定のお客様への対応で疲れている | 上司や同僚へ相談し、対応方法を見直す |
| クレーム対応を一人で抱えている | 上司や責任者へ相談する |
| 慢性的な人手不足で休憩や休日が取れない | 職場環境の改善を相談する |
| カスタマーハラスメントを会社が放置している | 配置転換や転職も含めて環境を変える |
| 上司や同僚との人間関係が強いストレスになっている | 異動や転職を検討する |
| 休日になっても仕事のことが頭から離れない | 無理に続けず、休息や相談を優先する |
| 睡眠や食欲、体調などに変化が出ている | 仕事を続けることより、休養や専門家への相談を優先する |
一時的な疲れなら、まずは休息を取りながら様子を見る
繁忙期やイベント、急な欠員などによって、一時的に仕事量が増えている場合は、必ずしも職場を変える必要はありません。
忙しい時期が終われば落ち着く見込みがあるのであれば、まずは睡眠時間を確保したり、休日にしっかり休んだりしながら様子を見る方法があります。
ただし、「繁忙期だから仕方がない」という状態が何カ月も続いている場合は注意が必要です。一時的な忙しさではなく、慢性的な人手不足や業務量の多さが原因になっている可能性があります。
一人では解決できないストレスは、職場へ相談する
クレーム対応や業務量、人間関係などのストレスは、自分の工夫だけでは解決できないことがあります。
たとえば、特定のお客様から繰り返し厳しい要求を受けている場合や、一人だけにクレーム対応が集中している場合は、上司や責任者へ相談してみましょう。
シフトの調整や担当変更、複数人での対応など、職場側の対応によって負担を軽減できる可能性があります。
相談する際は、「つらい」という気持ちだけでなく、「どのような状況が続いているのか」「何を変えてほしいのか」まで整理して伝えると、具体的な対応につながりやすくなります。
職場の構造そのものが原因なら、環境を変えることも考える
人手不足が常態化している、休憩が取れない、カスタマーハラスメントを相談しても会社が対応してくれないなど、職場の仕組みそのものがストレスの原因になっている場合があります。
こうした問題は、個人の気持ちの持ち方や接客スキルだけで解決するのは難しいでしょう。
上司や会社へ相談しても改善されない場合は、異動や転職によって環境を変えることも選択肢のひとつです。
同じ接客業でも、スタッフの人数や業務分担、クレーム対応のルール、教育体制などは職場によって異なります。「接客業そのものが向いていない」と決めつける前に、現在の職場環境に原因がないかを考えてみることも大切です。
心身に不調が出ている場合は、仕事を続けることを優先しない
ストレスが強くなると、休日でも仕事のことばかり考えてしまったり、眠れなくなったり、食欲が落ちたりすることがあります。
このような状態が続いている場合は、「もう少し頑張れば慣れる」と無理に仕事を続けるより、休息を取ることを優先しましょう。
必要に応じて、家族や信頼できる人、職場の相談窓口、医療機関などへ相談することも検討してください。
接客業のストレスは、自分自身の工夫で軽減できるものもあれば、職場へ相談しなければ変わらないもの、環境そのものを変えたほうがよいものもあります。
まずは「何がつらいのか」「自分で変えられることなのか」「職場が変わらなければ解決しないことなのか」を整理してみると、次に取るべき行動を判断しやすくなるでしょう。
接客業でストレスを溜めないためのコツ・対処方法
接客業で長く元気に活躍している人は、ストレスを溜めないコツを上手に実践していることが多いです。この章では、新人~ベテランまで幅広い人が実践できる方法を7つ紹介しましょう。
業務中は「役割を演じている」と捉える
理不尽なカスハラ・クレームなどから心を守るためには、ユニフォームを着て仕事をする間は「役者として接客を行うイメージ」を持つのがおすすめです。
たとえば、どう考えても自分に非がない場面でお客様から厳しい叱責を受けた場合、「これから謝罪をする役を演じる」と捉えることで、納得できない状況での対応を行いやすくなるでしょう。
自己距離感を意識する
延々と続くクレームや叱責に耳を傾けざるを得ない状況では、自分および相手を客観的に見つめて分析する「自己距離感(セルフディスタンシング)」という概念・テクニックを活用するのも一つです。
自己距離感のテクニックをうまく使うと「いま自分は強い不安を感じている」「相手の要求は業務範囲を超えていないか」と一歩引いて確認するなかで、不安や恐怖の感情に支配されることなく、冷静な対処が可能となります。
理不尽なことには「仕事である」と割り切る
納得できないことをするうえで多大なストレスを感じがちな人には、「これは仕事だから」と意味づけ・理由づけをするのもおすすめです。
「仕事だからそういう選択をせざるを得なかった」と意味づけすれば、自分の意に反する対応を行った場合も、心の傷つきを最小化しやすくなるでしょう。
深呼吸をとりいれる
深呼吸は、接客業の仕事で焦り・不安・怒りなどが生じたときに、自らを落ち着いた状態に導く手段の一つです。
深呼吸を通じて副交感神経が刺激されると、落ち着きを取り戻しやすくなるでしょう。また一部の研究では、呼吸法によりストレス指標が改善する可能性も示されています。
カスハラ対応をする際には、事前に深呼吸を行うことで、落ち着いた心で適切な対処を行いやすくなるでしょう。
相談できる相手を持つ
心に溜まったストレスやモヤモヤは、言語化して相談することで、気持ちが整理される場合があります。
そのために必要なのが、同じ職場の同僚や上司、接客の仕事をしている友人といった「相談相手」です。
たとえば、カスタマーハラスメントで落ち込んでいるときは、自分の立場や現場の状況をよく知る同僚や上司と話すことで、恐怖や不安から解放されることもあります。
また、不規則な生活に陥りやすい接客業に従事するのであれば、孤独に陥ることを防ぐために、自分と休みが合いやすい友人を持つことも大切でしょう。
仕事とプライベートの境界を明確化する
ストレスの蓄積を減らすうえでは、休日は思い切りリフレッシュできる環境をつくることも大切です。そのために必要となるのが、仕事とプライベートを完全に分けることになります。
人事労務の領域には「つながらない権利」という言葉があります。勤務時間外や休日に業務連絡への対応を求められない状態を確保しようとする考え方です。
スマートフォンが普及したいまの時代は、休日でも会社からの電話やメール、チャットなどによる連絡を確認できてしまいます。しかし、それらの連絡への返信を迅速に行い続けているようでは、心身のリフレッシュはなかなかできないでしょう。
接客業の仕事をするなかで多くのストレスが溜まっている場合は、プライベートの時間には、つながらない権利を意識して過ごすことも大切です。
没頭できる趣味などを見つける
休みの日もつい業務用チャットツールを見てしまう場合は、以下のような趣味に没頭するなかで、スマートフォンと適度に距離をとるのもおすすめです。
- 水泳やランニングなどのスポーツ
- 温泉でのリラックス
- 書道や絵画などの創作活動
没頭できる趣味や身体を動かす習慣は、疲労回復やストレス解消にも役立つことが多いです。また、接客業に不可欠な体力を高めるうえでも、無理のない範囲で身体を動かす習慣は有効でしょう。
接客業のストレスで不調を感じたら休職・転職も視野に入れるべき
仕事を通じて多くのストレスが溜まり、以下のようなサインが長く続くようなら、それは心が限界に達し始めている状態かもしれません。
- (「仕事に行きたくない」を通り越して)「仕事に行けない」と感じる
- 気持ちの落ち込みが激しい
- 集中力や決断力の低下から、仕事に支障が出始めている
- 常に自分を責めたり、罪悪感を感じてしまう
- 何に対しても興味がわかない、楽しくない
- 最近特に怒りっぽかったり、攻撃的になっている
- 不調が2週間以上続く など
こうした状態を長く放置して、無理に仕事を続けていると、メンタルヘルス不調につながるおそれがあります。仕事で心身が壊れてしまい働けなくなったら、本末転倒です。
先述の方法を組み合わせてもストレス解消が難しかったり、上記のようなサインが長く続く場合は、休職や転職をすることも一つになります。
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宿泊業専門のエージェントでストレスの少ない職場探しを
ホテルや飲食などの接客業には、働く人にストレスを溜めさせてしまう要因がたくさんあります。また、感受性が高く繊細であったり、納得感を重視する性格だったりすると、接客の仕事によるストレスがさらに大きくなりやすいでしょう。
こうしたなかでストレスが溜まりにくい職場を見つけるためには、宿泊業に特化した転職エージェントに相談するのがおすすめです。
宿泊業専門の転職エージェントには接客業に精通したアドバイザーが在籍しており「カスハラ対応の方針や相談体制が整っている職場を探したい」「自分の感受性や繊細さを活かしたい」といった希望条件・不安・悩みにも耳を傾けてくれます。
また、アドバイザーと二人三脚で転職活動を行えば、自分のスキルを最大限に活かし少ないストレスで働ける職場とも出会いやすくなるでしょう。

