ホテルや飲食店の求人で見かける「従食」とは、従業員向けに提供される食事や、食事を割引価格で利用できる制度のことです。
まかないとほぼ同じ意味で使われる場合もありますが、職場によっては「従食は有料、まかないは無料」と区別しています。
この記事では、従食の意味やまかないとの違い、ホテルで働くメリット、転職前に確認したいポイントを解説します。
従食とは?
「従食(じゅうしょく)」は飲食・宿泊業界などで、従業員向けの食事や食事割引制度を指して使われる言葉です。正式な名称や制度内容は企業によって異なります。
従食はホテルや飲食店で使われることが多い言葉
従食という言葉は、食事を提供する設備や調理部門を持つホテル、旅館、レストランなどでよく使われます。
ホテルでは調理職やレストランサービス職だけでなく、フロントや管理部門などのスタッフが利用できる場合もあります。
従食の内容や料金は勤務先によって異なる
従食には、従業員食堂で定食を提供する場合や、従業員専用メニューを用意する場合、ホテル内レストランの料理を割引価格で提供する場合、弁当や食券を支給する場合などがあります。
料金も、無料、1食ごとの定額制、通常価格からの割引などさまざまです。利用した分だけ支払う職場もあれば、給与から控除される職場もあります。
したがって、求人票に「従食あり」と書かれていても、無料で食事が付くとは限らない点に注意しなければなりません。
従食とまかないの違い
従食と似た言葉に「まかない」があります。どちらも従業員向けの食事を指しますが、企業や店舗によって使い方が異なるため、名称だけで制度の内容を判断しないことが大切です。
従食とまかないに明確な統一基準はない
従食とまかないには、法令や業界全体で定められた明確な区分はありません。同じような食事制度でも、職場によって「従食」と呼ぶ場合もあれば、「まかない」と呼ぶこともあります。
両者に定義上の明確な違いはなく、呼び方は企業によって異なります。求人票に「まかないあり」と記載されていても有料の場合がある一方、「従食あり」でも会社が費用を全額負担するケースがあります。
重要なのは呼び方ではなく、実際の料金や利用条件です。
従食は有料、まかないは無料と区別する職場もある
職場によっては、割引価格で利用する制度を「従食」、厨房で従業員向けに作る食事を「まかない」と呼び分けることがあります。ただし、料金の有無を含め、統一された使い分けはありません。
従食は従業員食堂や通常メニューの割引など、福利厚生の一環として運用されることがあります。一方、まかないは、厨房で従業員向けに作る食事を指す傾向があります。
ただし、施設によっては「無料従食」「有料まかない」という表現もあるため、名称だけで料金を決めつけないことが重要です。
従食と従業員食堂は制度と施設という違いがある
従食は、従業員向けに食事を提供する仕組みや、提供される食事そのものを表す言葉です。これに対して従業員食堂は、従業員が食事を取るための施設を指します。
そのため、「従食あり」と記載されていても、ホテル内に専用の従業員食堂があるとは限りません。弁当を受け取る方式や、レストランの一部メニューを割引価格で利用する方式も考えられます。
食堂の有無を重視する場合は、求人票の福利厚生欄だけでなく、施設や提供方法も確認しましょう。
従食の主な提供方法と料金の支払い方
従食の利用方法は、ホテルの規模や設備、勤務時間帯によって異なります。
転職後に「想定していた制度と違った」とならないよう、代表的な提供方法と支払い方法を押さえておきましょう。
従業員食堂や専用メニューが提供される
規模の大きなホテルでは、バックヤードなどに従業員食堂を設け、定食、丼物、麺類などを提供している場合があります。
食券制、社員証で利用履歴を記録する方式、セルフサービス方式など、運用方法はさまざまです。小規模なホテルでは、従業員食堂を設けず、専用の食事や弁当を用意する場合もあります。
通常メニューを従業員価格で利用できる場合もある
ホテル内のレストランや飲食店では、対象メニューを一定額で食べられる制度や、通常価格から一定割合を割り引く制度が設けられていることもあります。
ただし、すべてのメニューが対象とは限りません。対象となる料理が決まっている、混雑する時間帯は利用できない、勤務日に限り1日1回までといった条件が付く場合があります。
お客様向けの料理を、そのまま従食として食べられるとは限らない点には注意しましょう。
料金は都度払いまたは給与から控除される場合がある
従食の料金には、利用するたびに現金で支払ったり食券を購入したりする方法と、1カ月分をまとめて給与から控除する方法があります。
食事代を給与から控除する場合、税金や社会保険料など法令で控除が認められているものとは異なり、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、ないときは労働者の過半数代表者との書面による協定が必要です。これは労働基準法第24条の賃金全額払いの原則に関係するルールです。
給与明細に記載された食事代と、実際の利用回数が合っているかも確認しましょう。
従食があるホテルで働くメリット
従食は、ホテルで働く人の食事を支える制度で、福利厚生の一環として設けられている場合があります。勤務時間が変則的なホテルでは、館内で食事を取れることが働きやすさにつながります。
勤務中の食事を用意する手間を減らせる
従食を利用できれば、毎日弁当を作ったり、出勤前に食事を購入したりする手間を減らせます。
早番、遅番、夜勤などで周辺の飲食店を利用しにくい場合でも、館内で食事を取れれば食事を確保しやすくなります。ただし、食堂の営業時間と自分のシフトが合うかは確認が必要です。
外食より食費を抑えられることがある
従食が社員価格で提供されていれば、勤務のたびにコンビニや飲食店を利用するよりも、食費を抑えられる可能性があります。
例えば、1食300円の従食を月20回利用する場合、月の負担額は6,000円です。周辺のランチ価格と比べることで、実際にどの程度の節約になるかを判断できます。
利用しなくても固定費がかかる制度もあるため、1食当たりの価格だけでなく月額負担も確認しましょう。
職場内で効率よく休憩を取れる
館内で食事を済ませられる職場では、休憩時間に外へ移動する必要がありません。着替えや移動に時間がかかるホテルでは、限られた休憩時間を使いやすくなるでしょう。
従業員食堂では、普段は接点の少ない他部門のスタッフと交流する機会になることもあります。
従食を利用する際のデメリットと注意点
従食は便利な制度ですが、すべての人にとって必ず得になるとは限りません。料金だけでなく、利用時間、メニュー、対象者などの条件を確認する必要があります。
従食は無料とは限らない
「従食あり」は、無料で食事が提供されるという意味ではありません。会社が一部を補助し、残りを従業員が負担する制度も多くあります。
また、求人票に「食事付き」「まかないあり」「食事補助あり」と書かれている場合も、それぞれ無料とは限りません。
求人を比較するときは、制度の名称ではなく、1食当たりの自己負担額、会社の補助額、給与から控除される金額を確認することが重要です。
利用できる時間や回数が限られる場合がある
従食には、勤務日のみ、1日1食まで、決められた休憩時間のみなどの利用条件が設けられている場合があります。
従業員食堂が昼と夕方だけ営業しているホテルでは、早朝勤務や深夜勤務のスタッフが利用できないことも考えられます。夜勤者には弁当や夜食が用意されるのか、別の補助制度があるのかも確認したいところです。
寮生活を予定している人は、休日にも利用できるか、朝食や夕食も提供されるかを確認しましょう。
メニューや食事制限への対応を確認する必要がある
従食は、毎日複数のメニューから選べるとは限りません。日替わり定食だけの職場や、弁当の種類が決まっている職場もあります。
食物アレルギー、宗教上の食事制限、ベジタリアン対応などが必要な場合は、入社前に対応の可否を確認しましょう。
食事制限がある人は、従食を利用しない選択ができるか、持参した食事を食べる場所があるかも確認しておくことをおすすめします。
従食には税金がかかる?
会社が従業員に食事を提供すると、会社が負担した部分が経済的な利益とみなされ、給与として課税されることがあります。ただし、一定の要件を満たせば給与として課税されません。
一定の条件を満たす食事の支給は給与として課税されない
2026年4月1日以後に支給される食事については、次の2つの要件を両方満たす場合、会社が負担する食事代は給与として課税されません。
- 従業員が食事の価額の半分以上を負担している
- 食事の価額から従業員の負担額を差し引いた金額が、1カ月当たり7,500円以下である
条件を満たさない場合は、食事の価額から従業員の負担額を差し引いた残額が給与として課税されます。非課税限度額は2026年4月に、従来の月額3,500円から月額7,500円へ引き上げられました。
7,500円以下かどうかは、消費税と地方消費税を除いた金額で判定されます。
現金による食事手当は原則として給与扱いになる
食事そのものを提供する場合と、食事代として現金を支給する場合では、税務上の扱いが異なります。
国税庁によると、食事を提供する代わりに現金で補助する場合は、深夜勤務者に夜食を提供できないため1食当たり650円以下(消費税および地方消費税を除く)を支給するケースなどを除き、原則として補助額の全額が給与として課税されるとのことです。
なお、残業または宿日直を行う際に現物で支給される食事は、無料でも給与として課税しなくてよいとされています。転職時は、食事が現物で提供されるのか、食事手当として給与に加算されるのかを確認しましょう。
従食のあるホテルへ転職するときに確認したいこと
従食は毎日の生活に関わる福利厚生です。特に寮生活やリゾートホテル勤務では、提供条件が生活費や働きやすさに影響します。
求人票では料金と利用条件まで確認する
求人票に「従食あり」と書かれていたら、次の項目を確認しておくのが安心です。
- 1食当たりの自己負担額
- 無料か有料か
- 会社からの補助額
- 1日に利用できる回数
- 利用できる時間帯
- 勤務日以外も利用できるか
- 対象となる雇用形態
- 従業員食堂、弁当、食券などの提供方法
- 都度払いか給与からの控除か
- 従食を利用しない選択ができるか
詳しい条件が書かれていなければ、採用担当者に確認しましょう。
面接では具体的な利用場面を質問する
面接で従食について尋ねるときは、福利厚生だけを重視している印象にならないよう、勤務条件を確認する質問のひとつとして聞くと自然です。
例えば、次のように質問できます。
「求人票に従食制度ありと記載されていましたが、利用できる時間帯と自己負担額を教えていただけますか」
「早番や遅番の勤務でも、従業員食堂を利用できますか」
「食事代は利用するたびに支払うのでしょうか。それとも給与から控除されるのでしょうか」
シフト例と併せて聞けば、入社後の利用場面をイメージしやすくなります。
従食だけでなく給与や休日なども含めて比較する
従食が充実していることは、ホテルを選ぶ際の魅力のひとつです。しかし、従食だけで転職先を決めるのはおすすめできません。
基本給や賞与、年間休日、残業時間などが、職場への満足度を左右する主な条件となります。また、夜勤の回数、住宅手当、社員寮、交通費なども含めて、待遇全体を比較しましょう。
従食が安くても基本給が低い職場や、食堂があっても休憩を取りにくい職場では、期待したメリットを感じられない可能性があります。
待遇と職場環境を総合的に判断するための軸を持っておくことが大切です。
求人票だけで職場の実態を判断しにくい場合は、ホテル業界に詳しい転職支援サービスを利用し、従食を含む福利厚生や職場環境を確認する方法もあります。
従食の内容を確認して働きやすいホテルを選ぼう
従食は、ホテルや飲食店などが従業員に提供する食事や、食事を割引価格で利用できる制度のことです。まかないと同じ意味で使われる場合もありますが、従食は有料、まかないは無料と区別する職場もあります。
ただし、呼び方や料金、利用時間、提供回数は勤務先によって異なります。「従食あり」という表記だけで無料と判断せず、1食当たりの負担額や支払い方法、自分のシフトで利用できるかを確認しましょう。
転職先を選ぶ際は、従食だけでなく、給与、休日、勤務時間、社員寮などの条件も含めて比較することが大切です。
自分の働き方や生活に合った制度が整うホテルを選び、無理なく働ける環境を見つけましょう。

